バイデン米政権、予算教書に盛り込まれた中間層向け負担軽減措置の具体策を公表

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月18日

米国のバイデン政権は3月11日、2025年度予算教書(2024年3月12日記事参照)に関連して、中・低所得者層の負担軽減に向けた取り組みに関するファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。ファクトシートでは、インフレ率の低下や賃金の上昇などのマクロ経済政策面での成果や、ジャンク手数料やシュリンクフレーション(注1)の取り締まり、薬価引き下げ交渉の開始など、これまでの取り組みをアピールするとともに、予算教書に盛り込まれた今後の取り組みについて以下のとおり内容を具体化した。

(1)処方薬や医療費の削減

  • インフレ削減法(IRA)の下で拡大された保険料控除の恒久化やメディケイド(低所得者層向けの公的医療保険)拡大に向けた財政的インセンティブの提供、小児医療保険プログラム(CHIP)に対する加入料などの禁止などにより、良質で手頃な医療へのアクセスを確保する。
  • 薬価引き下げ交渉のペースを大幅に早め、より多くの医薬品を発売後より早く交渉に持ち込むことや、IRAに基づきメディケア受給者に適用されている処方箋薬費用上限(年間2,000ドル)の拡大やインスリン費用低減の非メディケア対象者への拡大に取り組むなど、処方薬へのアクセスを改善する。

(2)家庭のコスト削減

  • 年収20万ドル以下の家庭を対象とした手頃な価格(1日10ドル以下、低所得者層は無料)の乳児保育の新制度を創設するなど、保育コストを削減する。また、就学前教育の3歳児への拡大や、4歳児の保育料無償化に向けた資金提供を行う。
  • 児童税額控除について、2021年米国救済計画法(2021年3月16日記事参照)の下で行われていた控除額(注2)を復活させ、中・低所得者層の約3,900万世帯に年間平均2,600ドルの減税を実施する。また、子供のいない低所得者向けには、勤労所得税額控除についても同様に米国救済法に沿った措置を復活させる。
  • 女性・乳幼児向け栄養プログラム(WIC)を通じたセーフティーネットの提供を実施する。
  • 住宅ローン救済クレジットや第1世代住宅購入者への頭金支援などを通じた住宅アクセスの改善、低所得者向け賃貸住宅の建設に係る税額控除や住宅バウチャーの拡大を通じた賃料引き下げにつながる取り組みを実施する(2024年3月8日記事参照)。
  • 中・低所得者向け奨学金の拡充や無料のコミュニティカレッジの拡大、120億ドルの「大学費用削減基金PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(注3)」の創設などを通じ、教育コストを削減する。
  • 農村部におけるクリーンエネルギーの拡大や、エネルギー効率を向上させるための取り組みを支援するとともに、低所得者向けのエネルギー・水道料金の削減に取り組むことで、エネルギーコストを削減する。
  • 学生ローンの組成手数料の廃止や、反トラスト法執行の強化を通じて、ジャンク手数料を取り締まる。

(注1)商品の価格は変えずに、その内容量をシュリンク(縮小)させ、実質的な値上げを行う行為。

(注2)児童税額控除は、児童1人当たり2,000ドルを上限に所得税を控除する仕組みとなっているが、米国救済計画法の下では、新型コロナ禍の特例として5歳以下の児童1人当たり3,600ドル、6歳から17歳までの子供1人当たり3,000ドルに拡大されていた。

(注3)高校在学中にキャリアに関連する大学の単位取得を希望する者に対して12単位まで無償で提供するための取り組みや、手頃な価格で教育を提供する大学を支援する取り組みなどを実施することなどを目的として創設される基金。

(加藤翔一)

(米国)

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