バイデン米大統領が2025年度の予算教書を発表、歳出・歳入両面で一般教書演説の内容を具体化

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月12日

米国のバイデン政権は3月11日、2025年度予算(2024年10月~2025年9月)の予算教書を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

教書で示された2025年度の歳出総額は7兆2,660億ドルで、2024年度の歳出見通しの6兆9,410億ドルから4.7%増加した。歳出は、国防費など議会の可決が必要な裁量的経費と、社会保障などの義務的経費に分かれている。裁量的経費は計1兆9,290億ドル(国防費が9,000億ドル、非国防費が1兆290億ドル)、義務的経費は4兆3,720億ドル、利払い費は9,650億ドルを見込む。また、裁量的経費のうち、新たに措置を要求する額は1兆6,710億ドルとなっており、この額は財政責任法の規定内に収まっている模様だ。歳出面で新たに盛り込まれた項目は、チャイルドケアや幼児教育の拡充(150億ドル)、ヘルスケア関連経費の削減(90億ドル)、住宅や家賃に関する負担軽減措置(310億ドル、2024年3月8日記事参照)、児童税額控除の拡充(2,100億ドル)などで、一般教書演説で盛り込まれていた中間層向けの各種措置を反映したものとなっている。

一方、歳入は前年度比7.9%増の5兆4,850億ドルを見込む。内訳は、個人所得税が前年度比7%増の2兆6,790億ドル、法人からの税収が9.0%増の6,680億ドル、社会保障税が3.5%増の1兆2,840億ドルなどとなっている。個人所得税については、富裕層増税により750億ドルの増収を見込む。法人からの税収については、法人実効税率の28%への引き上げ(1,220億ドル)や、最低法人税率の21%への引き上げ(140億ドル)、自社株買いに当たっての消費税の引き上げ(150億ドル)などによる増収を見込む。社会保障税については、年収40万ドル以上の富裕層に対するメディケア税の引き上げ(810億ドル)などによる増収を見込む。

2025年度予算案では、歳入の伸びが歳出の伸びを上回る想定で、財政赤字は前年度比4.5%減の1兆7,810億ドル、GDP比でも6.1%(前年度は同6.6%)に縮小する見込みとなっている。また、GDP比でみた債務残高は、2.1ポイント上昇し126.4%になると見込んでいる。なお、これらの予算の前提となっている経済予測は、実質成長率が2024年度1.7%、2025年度1.8%、消費者物価指数(CPI)の伸び率が2024年度2.9%、2025年度2.3%、失業率が2024年度4.0%、2025年度4.0%となっている。

ただし、議会は上下院でねじれ状態となっており、2024年度本予算もいまだ半数が可決されていない状態だ(2024年3月11日記事参照)。歳入面で想定する大企業や富裕層向け増税は、バイデン政権成立時に公約となっていたものだが、いまだに実現には至っておらず、現時点で成立の見通しも立っていない。その意味で2024年11月の大統領選挙に向けた公約の具体化という側面が強く、歳出・歳入両面において今後、与野党間で激しい議論が予想される。

(加藤翔一)

(米国)

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