テスラ工場が近隣の送電設備火災の影響で操業停止に、重要インフラ保護が課題
(ドイツ)
調査部欧州課
2024年03月18日
ドイツ東部ブランデンブルク州にある米国電気自動車(EV)メーカーのテスラの工場(2022年3月30日記事参照)が3月5日、近隣の送電設備火災による停電で操業を停止した。地元紙「ターゲスシュピーゲル」は同日、環境保護の極左グループから犯行声明の電子メールを同紙が受信したと報じた。テスラ工場への抗議としての送電設備への放火だという。13日には、工場の稼働再開が報じられた。
ドイツ商工会議所連合会(DIHK)のマルティン・バンスレーベン事務局長は3月7日、インフラは「ドイツ経済の生命線」かつ「投資家がドイツは安全な国と評価し続けられることが不可欠」と述べ、経済活動や投資の点からのインフラ保護を求めた(プレスリリース)。
ドイツ周辺や国内では、2022年9月にロシアとドイツ間のガスパイプライン・ノルドストリームの爆破・破壊、同年10月にドイツ鉄道の通信ケーブルの切断による鉄道運休といった重要インフラの障害が発生している。
政府は重要インフラ保護の法整備を進めるも途上
ドイツでは、EU域外投資家による重要インフラ運営企業への投資や買収には対外経済法(注1)、重要インフラのIT面の保護には連邦情報セキュリティ庁(BSI)法(2021年6月4日記事参照)で対策を進めた。だが、今回のような物理的攻撃やサイバー攻撃からのより効果的な保護は法整備中で、次のような状況だ(注2)。
- 物理的攻撃に対して:EU加盟国は重要な組織の強靭(きょうじん)化に関する指令(CER指令)の国内法化と2024年10月18日からの適用が義務。ドイツ内務・地域省は重要インフラ包括法の草案を公表。草案(2023年12月21日付)は、重要インフラ(添付資料表1参照)の運営組織へのリスク分析(草案9条)、技術・保安・組織面の強靭化(10条)、事故発生時の当局への報告(12条)など義務化。
- サイバー攻撃に対して:EU加盟国は改正ネットワークおよび情報システム指令(NIS2指令)の国内法化と2024年10月18日からの適用が義務。ドイツ内務・地域省は同指令を国内法化するための法律の草案を公表。草案(2023年9月27日付)は、重要インフラ運営や重要産業分野(添付資料表2参照)に携わる組織へのIT分野のリスク管理やサイバーセキュリティー対策(草案30条)、事故発生時の当局への報告(32条)など義務化。
なお、両草案の法律化で、業種などにより在ドイツ日系企業もリスク管理など対応が求められるため、立法動向の注視が必要だ。
(注1)対外経済法による重要インフラ運営企業などへの投資事前審査制度は、ジェトロウェブサイトの制度情報(外資に関する規制 規制業種・禁止業種)参照。
(注2)草案は閣議決定される法案の前のもので詳細まで規定されていない。内容も今後変更の可能性がある。
(二片すず)
(ドイツ)
ビジネス短信 bf04d7a541921a31