バイデン米政権、貨物トラック用の電気、水素インフラに向けた国家戦略発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月19日

米国のバイデン政権は3月12日、ゼロエミッションの貨物用トラックのためのインフラ構築に向けた「全米ゼロエミッション物流回廊戦略(National Zero-Emission Freight Corridor Strategy)」を発表した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

同戦略は、商用の中型・大型ゼロエミッション車(ZE-MHDV)用の充電インフラ、水素燃料供給インフラを展開するに当たっての指針として、エネルギー省(DOE)とエネルギー・運輸合同事務所(注1)に加え、運輸省(DOT)と環境保護庁(EPA)が協力して策定したもの。陸上交通修繕法(FAST法)で定められている全国道路物流ネットワーク(NHFN、注2)や貨物輸送のエコシステムで、貨物量の多い輸送路沿いや輸送関連施設、利用頻度の高い港などをゼロエミッション物流(ZEF)ハブに特定し、ZEFハブを連結させたZEF回廊を設定して、電気自動車(EV)用の充電設備と水素充填(じゅうてん)設備のネットワークを構築することを目的とする。対象期間は2024年から2040年まで。政府は全中型・大型車のうち、ZE-MHDVの販売割合を2030年までに30%、2040年までに100%とする目標を掲げており、今回の戦略を基盤に、充電設備や水素充填設備を充実させることで、ZE-MHDVの早期導入を目指す。また、輸送に伴う燃料費やメンテナンス費用の削減、気候変動目標の達成、健康被害の低減のほか、民間投資を促すことで、インフラ関連企業と電力会社の戦略的投資の促進も狙う。

2040年に向けた取り組みは次のとおり。

  • フェーズ1:2024~2027年。貨物量に基づくZEFハブの特定〔1万2,000マイル(約1万9,300キロ)〕
  • フェーズ2:2027~2030年。ZEFハブの連結(1万9,000マイル)
  • フェーズ3: 2030~2035年。ZEF回廊の拡大(3万7,000マイル)
  • フェーズ4:2035~2040年。全国ZEFネットワークの完成(NHFNの94%に当たる4万9,000マイル)

今回の発表に際し、DOEのジェニファー・グランホルム長官は「1世紀以上にわたり、石油燃料の貨物輸送は米国の家庭に重要な食料や資源を運んできたが、同時に、これらの車両は特に人口密集地域での公衆衛生の低下にも寄与してきた。バイデン・ハリス政権は、米国の家族や企業を支援するだけでなく、将来の世代の環境を守るために、貨物輸送を変革する革新的な戦略でこの問題に正面から取り組んでいる」と述べた。また、アリ・ザイディ大統領補佐官兼国家気候アドバイザーは「これは環境正義を実現するための大きな動きだ。大型トラックの交通量の75%がわが国の道路のわずか4%を走行し、最も脆弱(ぜいじゃく)な地域社会の健康を危険にさらしている。交通量の多い道路とそれらが接続するハブの、ゼロエミッションインフラに対するバイデン大統領の歴史的な投資は、米国の貨物輸送を急速に変革し、米国のイノベーションを強化するだろう」と述べた。

(注1)全国的な電気自動車(EV)充電ネットワークを構築するため、エネルギー省と運輸省が2021年12月に設立した共同事務所。

(注2)米国の貨物輸送システムの最も重要な高速道路部分として特定される高速道路のネットワーク

(大原典子)

(米国)

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