EV普及でサプライチェーンにも変化の兆し

(タイ)

調査部アジア大洋州課

2024年03月25日

ジェトロは3月12日、タイ工業省・工業経済事務局(OIE)を訪問し、タイの電気自動車(EV)の市場、サプライチェーン、関連政策の動向についてヒアリングした。

OIEによると、タイの乗用車とピックアップトラックの自動車市場(2023年12月時点、年間新規登録台数)は、車種別でシェアの多い順に、ガソリン車(ICE)が全体の79.6%、ハイブリッド車(HEV)が10.0%、バッテリー式電気自動車(BEV)が9.0%、プラグイン車(PHEV)が1.4%を占める。過去6年では、2018年に98.0%あったICEのシェアが2023年に79.6%まで減少した。逆に、2018年に2.0%だったHEVは2023年には5倍の10.0%、BEVも同期間中0.0%から9.0%まで拡大した。

こうした市場の変化は、完成車メーカーやサプライヤー数にも影響を及ぼしている。2024年1月末時点で、BEV生産でタイ投資委員会(BOI)から認可を受けた事業は18件(17社)、PHEVは7件(7社)、HEVは6件(6社)だ。これら認可事業の生産台数の合計(予定)は、BEV約38万台、HEV約30万台、PHEV約16万台となる。その他、EVバッテリーやトラクションモーター、バッテリーマネジメントシステム(BMS)などの主要EV部品の製造事業でも、多数の企業がBOIから既に承認されている(2023年6月時点、注)。その結果、タイの自動車サプライチェーンでは、2018年に18社だった完成車メーカー(二輪除く)が2023年は30社まで増加。同様に、2018年に476社だったティア1サプライヤーが2023年には529社に、ティア2以下も、同期間中に1,210社から1,756社へと増加した。

登録台数や生産面でEVが普及しつつあるタイだが、タイの中期国家計画「第13次国家経済社会開発計画(2023~2027年)」では、EV産業育成で「EV生産技術へのさらなる投資促進や、既存のガソリン車を中心とした自動車サプライチェーンのEVシフト支援」の重要性に言及している。こうした目的のため、OIEも、既存の自動車部品産業の実態調査や、EV製造に必要な人材開発支援などを行っているという。

また、OIEは、これまでEVやその部品の生産に対する多くの支援策を政府が公表してきたが、今後はバッテリーのリサイクルやリユース推進に関する議論も必要だとする。この点、現時点では未定だが、工業省内でも今後の政策の方向性が議論されている。今後は、こうしたリサイクルなどでも、外国からの技術移転への期待が高まる可能性があると説明した。

(注)2023年6月時点の主要EV部品製造事業の承認状況は、BOIの公式ウェブサイトによる。BOIの投資申請手続きは「認可」の後、「承認」というプロセスを経るため、必ずしも全ての認可案件が実際の操業につながる訳ではないが、投資傾向を把握する上で参考資料として活用が可能。

(田口裕介)

(タイ)

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