中国車の輸入が急増、EVで存在感

(スペイン)

マドリード発

2024年03月28日

スペイン自動車工業会(ANFAC)によると、2023年の乗用車新車登録台数(94万9,359台)に占める中国車は、前年から3.4倍の3万7,113台となった。中国車ブランド数は15に上るが、中国車の登録台数の8割近くは上海汽車傘下のMGが占め、それにリンク・アンド・コー(吉利汽車とボルボの合弁)、DRオートモビルズ(奇瑞汽車が欧州でノックダウン生産)、ポールスター〔ボルボと親会社の浙江吉利控股集団との合弁の電気自動車(EV)メーカー〕、BYD(比亜迪)などが続く。

燃料別にみると、中国車の約7割がガソリン車、残り3割がバッテリー式電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)となっている。登録台数全体に占める中国車のシェアは3.9%程度だが、BEVでは10.6%、PHEVでは8.9%と高くなっている。

中国車は、欧米ブランドをベースにしたデザイン性や機能性を低価格で実現したコストパフォーマンスの良さがユーザーに受け入れられており、MG「ZS」は2023年の新車登録台数第4位モデルとなった。ただ、2021年に1,617台にすぎなかった中国車の登録台数がたった2年で4万台近くまで伸びた主な要因として、大手各社が自前の自動車運搬船(RORO船)を急速に確保し、自動車輸送能力を強化していることが指摘される。

2023年のスペインの中国からの乗用車輸入額は前年の2.1倍で、フランスを抜いてドイツに次ぐ2位となった〔輸入にはフォルクスワーゲン(VW)やテスラなどの欧米メーカーの中国工場で生産された自動車も含まれる〕。ANFACによると、複数の中国ブランドがスペインの港湾を通じて欧州向けに輸出していることも急増の背景にあるという。

2023年10月から中国製BEVに関する反補助金調査を行っている欧州委員会(2023年10月6日記事参照)は3月5日、「不当な補助金の十分な証拠がある」として、最終調査結果でEU域内産業が重大な損害を被っていることが裏付けられた場合に、相殺関税をさかのぼって賦課できるよう、中国製BEV輸入の税関登録を開始することを決定した(注)。これに対し、スペインのメディアでは、早ければ夏にも中国製BEVが3,000~1万ユーロ値上がりすると話題になった。

(注)同実施規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは3月7日に施行された。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

ビジネス短信 73f66c8a0cdbb802