植物性由来の食品への「ステーキ」など肉製品名称が使用禁止に

(フランス)

パリ発

2024年03月04日

フランス政府は2月27日、植物性タンパク質に由来する代替肉製品の商品名称について、肉製品であることを想起させるような単語の使用を禁止または制限するデクレ(政令)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布した。今回の政令は202451日から施行される。なお、フランス以外の国で製造または販売される製品には適用されない。

禁止する具体的な名称は、ステーキ、スペアリブ、ヒレ、サーロインなど21種を指定している。このほか、同政令では、ソーセージやベーコン、ナゲット、ハムなど、植物性タンパク質を含む可能性のある特定の動物性由来食品ごとに、植物性タンパク質の最大含有量を指定しており、その範囲内で植物性タンパク質を使用する限り、「ソーセージ」のように従来の名称を使用することができる。許容する植物性タンパク質の最大含有量の例としては、ソーセージの場合5.0%、サラミでは1.0%、全卵では0.1%など。

同政令はもともと2022年6月29日に公布したものだったが、植物性由来製品の発展促進を目指す業界団体のフランス・プロテインが公布から施行までの期間が短すぎるなどの理由で、最上級行政裁判所の機能を有する国務院に急速審理(注)で提訴したことにより、いったんは施行が停止されたものだった。一方で、「植物由来のハム」や「ベジタリアンステーキ」などの商品名は消費者の混乱を招く可能性があるとして、特に肉製品の生産者団体などから導入を求める声が強く、これらの声を踏まえてあらためて公布した。

2023年にイタリアで欧州初の培養肉の生産・販売禁止法案が可決される(2023年12月5日記事参照)など、代替タンパク質の製造・流通に関して、EU加盟各国独自の動きが始まっている。欧州司法裁判所は、EU加盟国が食品の原産地表示などについて追加の義務を規定することを「妨げるものではない」と以前から判断しており、今回のフランスの政令についても、同裁判所がEU法との適合性について判断するか注目されている。また、EUが共通ルールの制定に今後動くか注視する必要がある。

(注)急速審理とは、紛争を迅速に審理する司法手続き。急速審理担当の判事は本案審理担当の判事による評価の前に、当事者の権利保全、損害防止、明らかに違法な妨害をやめさせるための暫定措置を命じることができる。

(奥山直子、西尾友宏)

(フランス)

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