豊田通商グループのTASI、車両用エアバッグの新規生産ライン増設決定

(インド、日本)

ニューデリー発

2024年03月14日

豊田通商グループ傘下の豊通アンビカ・オートモーティブ・セーフティコンポ―ネンツ・インディア(TASI)は3月1日、インド北部ハリヤナ州のグルグラムで、車両用エアバッグを生産する新規生産ラインの増設を決定した。新設ラインは6月ごろに稼働の予定だ。TASIは豊田通商グループ(出資比率96.18%)と、インド地場縫製企業アンビカ・オーバーシーズ(同3.82%)による合弁企業で、車両用エアバッグと高機能エアフィルターの製造を行っている。

TASIが今回増設を決めた背景には、インド国内の車両用エアバッグの需要拡大がある。インド道路交通・高速道路省(MoRTH)は車両の安全性向上を目的として、2017年12月に運転席、2021年4月に助手席へのエアバッグ装着を義務化。また、同省は2022年1月、さらに運転席と助手席の横部分各1点と、後部座席のサイドカーテン部分の左右各1点の追加装着義務を2022年10月以降に課す方針を発表した。この方針は最終的に取り下げられたものの、国内の自動車産業の車両用エアバッグに注目が集まるきっかけとなった。

TASIの日比伸一取締役社長(ジェトロのヒアリング日:3月5日)によると、車両用エアバッグのインド国内需要はこれまで限定的だったことから、2次サプライヤーティア2)ではTASI以外に国内生産する企業がこれまで見られず、中国やベトナムから輸入されることも多かった。車両用エアバッグ6点の義務化は見送られたものの、2023年10月に車両の安全性を評価する制度「バーラトNCAP(インド自動車アセスメント)」が新たに導入されたことは、車両用エアバッグの需要にも追い風となっているという。

TASIは需要拡大に応えるべく、車両用エアバッグの年間生産量を2022年度(2022年4月~2023年3月)実績の約300万枚から、2025年度には500万枚規模に増産していきたい考えだ。従業員数も現行の約600人から、将来的には1,000人以上まで広げたいという。同社は「女性が輝ける町一番の製造現場を作りたい」(日比社長)という方針の下、創業当初から工場のワーカーには全て女性を登用しているが(2019年1月24日付地域・分析レポート参照)、優秀な人材の中間管理職への抜てきも念頭に置き、社内体制の強化を図りたいとしている。

写真 TASI工場で働く女性ワーカー(TASI提供)

TASI工場で働く女性ワーカー(TASI提供)

(広木拓)

(インド、日本)

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