ロシア政府、モスクワ~サンクトペテルブルク間の高速鉄道新線建設を決定

(ロシア)

調査部欧州課

2024年03月26日

ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は3月14日、モスクワ市とサンクトペテルブルク市を結ぶロシア初の高速鉄道幹線(VSM)の建設開始を指示した。元々は2022年の着工を目指していたもの(2021年3月26日記事参照)。総延長は679キロ、2028年の開業を目指す(RBC2024年3月15日)。

幹線が整備されると、モスクワ市とサンクトペテルブルク市の間の所要時間は途中停車なしの場合で2時間15分になる。在来線路を使って同都市間を運行中の特急列車「サプサン」に比べ2時間前後の短縮となる。運行間隔は10~15分の計画(ノーボスチ通信2月16日)。

発着駅のあるモスクワ市、サンクトペテルブルク市のほか、レニングラード州、ノブゴロド州、トベリ州、モスクワ州内に全16駅が建設される予定(ベドモスチ3月15日)。ロシア鉄道のオレグ・ベロゼロフ社長によると、VSMは8両または16両編成で、最高速度は時速400キロ、巡航速度は360キロを目指す(タス通信3月14日)。建設はコンセッション方式(施設の所有権を公共団体が有したまま施設の運営を企業が行う方式)で実施し、建設総額は約2兆ルーブル(約3兆2,000億円。1ルーブル=約1.6円)を見込む(コメルサント2月17日)。

デニス・マントゥロフ副首相兼産業商務相によると、VSM用の車両製造は、都市近郊路線などで使用される新型車両「ラストチカ」を製造するシナラ・グループが行う。部品とシステムはロシア鉄道車両製造最大手トランスマシ・ホールディングが提供し、2026年の生産開始、2027年のロシア鉄道への納入を目指す(タス通信3月14日)。

VSM建設周辺地域は、ロシア全土の人口の20%に相当する3,000万人以上が居住することから、大きな経済波及効果を期待する声も上がる。ロシア商業銀行最大手ズベルバンクのゲルマン・グレフ頭取は中国での高速鉄道建設を例にとり、VSM開業後は周辺地域の地域総生産は他地域に比べ大きな向上が見込まれるとの期待を示した。

その一方で、計画の先行きに懐疑的な見方もある。高等経済学院のミハイル・ブリンキン輸送経済・輸送政策研究所長は、5年以内に高速鉄道の新線を建設することは可能だとしつつ、車両製造については西側諸国の技術なしにどこまでできるか、との疑問を呈している(ベドモスチ3月14日)。

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