1月の個人消費支出、名目所得は前月比1.0%増も消費はほぼ横ばい
(米国)
ニューヨーク発
2024年03月07日
米国商務省は2月29日、2024年1月の個人消費支出(PCE)を公表し、名目ベースで前月比0.2%増となり市場予測と一致した。内訳をみると、押し上げに寄与した分野は住宅サービス(前月比1.2%増、寄与度0.21ポイント)、金融サービス(2.0%増、0.14ポイント)、ヘルスケアサービス(0.6%増、0.1ポイント)などで、押し下げに寄与した分野は自動車(4.6%減、マイナス0.19ポイント)、ガソリン(4.6%減、マイナス0.11ポイント)などだった。また、物価を加味した実質ベースでは前月比0.1%減となった。1月は寒波の影響が小売統計にも表れており(2024年2月16日記事参照)、PCEも同様の動きとなった(添付表1、図1参照)。
所得関連では、個人所得が名目ベースで前月比1.0%増となり、市場予測(0.4%増)を上回った。内訳をみると、社会保障費のインフレ調整による影響により、所得移転(2.6%増、寄与度0.5ポイント)が最も大きく寄与、次いで利息・配当(2.1%増、0.3ポイント)、雇用者報酬(0.4%増、0.2ポイント)となっている。ただし、同様にインフレ調整による税負担の増加(6.0%増)で増加分はかなり相殺されており、1人当たり可処分所得でみると、名目ベースで前月比0.3%増、実質ベースでは同0.1%減と弱い動きになっている。また、貯蓄率は、過去3カ月間はほぼ横ばいの状態が続いていた利払い費が1月は前月比で1.8%増と再び上昇したことも影響し、前月(3.7%)からほぼ横ばいの3.8%だった(添付表2、図2参照)。賃金は増加しているものの、インフレや金利上昇により、貯蓄に回す余力までは乏しい家計状況がうかがえる。
物価関連では、PCEデフレーターは前年同月比2.4%上昇、食料・エネルギーを除くコア指数は2.8%上昇となり、いずれも市場予測と一致した。内訳をみると、押し上げに寄与したのは住居費(寄与度1.1ポイント)、ヘルスケアサービス(0.4ポイント)、金融サービス(0.4ポイント)などサービス分野で、押し下げに寄与した分野はガソリン(マイナス0.2ポイント)、レクリエーショングッズ(マイナス0.1ポイント)、家具(マイナス0.1ポイント)などほぼ財分野に集中している(添付表3、図3参照)。ガソリン価格の影響もあり、PCEデフレーターは大きく低下したものの、CPI(2024年2月14日記事参照)と同様にコア指数の低下は緩やかとなり、米国連邦準備制度理事会(FRB)が物価安定目標の2%に向けて着実に歩を進めているとの確信を持つには至らない内容だろう。ただし、市場は、物価に関して予測と合致し、大きなサプライズがなかったことを好感しており、6月利下げを予想する者が増加している。また、アトランタ連銀のラファエル・ボスティック総裁も今回のPCEデフレーターの結果を踏まえ、「経済情勢が予想どおり推移すれば、FRBは夏ごろに利下げに着手するのではないか」(ロイター2月29日)と市場の見解と整合的な内容を述べている。
(加藤翔一)
(米国)
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