2024年通年の米小売売上高、前年比2.5~3.5%増、前年より小幅な伸びにとどまる見通し

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月28日

全米小売業協会(NRF)は3月20日、2024年の米国の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)の見通しを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、前年比2.5~3.5%増の5兆2,300億~5兆2,800億ドルで、前年の年間成長率(3.6%増)を下回る見込みとした。業種別では、ネット販売を含む無店舗小売りが前年比7.0~9.0%増の1兆4,700億~1兆5,000億ドルと、前年の1兆3,800億ドルを上回る見通しだ。

今回の発表について、NRFのマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は「消費者の回復力は引き続き米国経済の原動力で、年末まで緩やかだが着実な成長が続くと確信している」としながらも、NRFのジャック・クラインヘンズ・チーフエコノミストは「2024年の課題は、最終的には個人消費が回復力を維持できるかどうかだ」と指摘した。NRFは、住宅価格と株価の上昇が2024年の個人消費を後押しすると見込む一方で、既に多くの消費者が信用収縮や物価上昇によるマイナスの影響を実感していることや、2023年と比較して月平均で約10万件の雇用減少を見込むなど、これまで個人消費の原動力となっていた労働市場が冷え込むことを懸念している。

NRFが指摘した懸念点は、既に小売り現場で顕在化している。ウォルマートやホームデポなど大手小売り各社の直近の決算では、消費者が高額商品への支出を控える傾向が浮き彫りになっており、先行きについて慎重な見方を示している(2024年2月27日記事参照)。

また、大手ディスカウントショップのダラーツリーのリック・ドレイリングCEOが、同社で現在最も急成長している顧客層は年収12万5,000ドル超の層だと述べたほか、ウォルマートのジョン・レイニーCEOも2月の決算発表で、同社が他社からシェアを獲得している最大の要因の1つとして、所得が10万ドル超の顧客の獲得を挙げるなど、現場からはインフレに伴うトレードダウン(注)の動きを指摘する声も上がる。経営コンサルティング会社カーニーの消費者研究所を率いるケイティ・トーマス氏も「多くの人は、自身が支払った金額に見合った利益を得ていると感じたいと考えている」「(低所得者層とより高い所得を得ている層の)両方が1年前よりも少し余裕がないように感じている」と述べるなど、インフレの影響が広範に及んでいると指摘する(「ファイナンシャル・タイムズ」紙3月16日)。

統計上でもこうした影響が確認できる。2024年2月の米国の小売売上高は前月比0.6%増と、市場予想を下回る結果となり、2024年1月、2023年12月の数値も下方修正された(2024年3月18日記事参照)。消費者の支出に対する慎重姿勢が強まっており、今後の消費動向に注目が集まる。

(注)より安価な商品を購入しようとする消費動向。

(樫葉さくら)

(米国)

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