インド重工業省、EV国内製造誘致を目的とした輸入関税優遇策を発表

(インド)

ニューデリー発

2024年03月22日

インド重工業省は3月15日、グローバルプレーヤーによる国内の電気自動車(EV)生産を後押しするべく、インド国内にEV製造工場を設置することなどを条件に、一部のEVにつき低い関税での輸入が可能となる新たな政策を発表した。

現在のEVの輸入時の関税率は、CIF価格が4万ドル以上の車両については100%、それ以外については70%だが、一定の条件を満たせば、CIF価格3万5,000ドル以上のEVを関税率15%で5年間輸入可能となる。

本スキームを通じて、認定企業は年間最大8,000台のEVを低関税で輸入することが可能となり、未使用の年間輸入限度額の繰り越しも認められる。この枠組みで輸入が認められるEV総台数は、免除される関税の総額、または投資額のいずれか低い金額に基づき決定される。本スキームの通知文には、例示として、企業が3万5,000ドルのEVを輸入し、5億ドルの投資を行う場合、5年間で2万5,974台のEVを低関税で輸入可能(注)と記されている。

本スキームの適用を受けるためには、申請承認日から3年以内に最低415億ルピー(5億ドル相当、約747億円、1ルピー=約1.8円)の投資、電動四輪車製造工場の設立、国内付加価値25%の達成、5年以内に国内付加価値50%の達成などが条件となっている。申請受け付けは、本スキーム通知の日(2024年3月15日)から120日以内をめどに開始される。

報道によると、「提案された関税構造は、イーロン・マスク氏が率いるテスラがインド政府との協議で行った要求と一致している」という(「ビジネス・スタンダード」紙3月15日)。これまでテスラとインド政府の間で、インド国内における同社工場の設立とEVの輸入関税の引き下げについて交渉が行われていた(2023年8月15日記事参照)。一方、地場自動車大手タタ・モーターズなどは、国内メーカーへの打撃を与えるとして反発していた。

インドの2023年のEV新規国内登録台数は、前年の5割増となる153万1,742台に達し、過去最高を記録した(詳細は2024年2月29日記事参照)。四輪車以上は8万8,291台となっており、タタ・モーターズが全体の7割を占める。今回の政策による国内市場への影響が今後も注視される。

(注)1台当たりの関税免除額:3万5,000ドル×(70-15)%=1万9,250ドル、1万9,250ドル×2万5,974台=4億9,999万9,500ドル<5億ドル

(花村大樹)

(インド)

ビジネス短信 3067eda0e9414799