モルディブ、首都近郊のビリンギリ島を開発へ、債務や観光依存には懸念も

(モルディブ、インド)

コロンボ発

2024年03月06日

モルディブのモハメド・ムイズ大統領は2月22日、大統領任期が終了する2028年までに、首都近郊のビリンギリ島の都市開発計画を完了させる意向を明らかにした。同島は首都マレのあるマレ島から2キロ離れた島で、マレとは10~15分間隔でフェリーが24時間運航している。建設・インフラ省とベルギーの建設企業ベシックス(BESIX)は同日、国際空港建設プロジェクトや観光地区の開発に関する覚書を結んだ。

モルディブは新型コロナウイルス流行から短期間で回復し、堅調に経済成長を続けている(2023年9月29日付地域・分析レポート参照)一方で、債務と観光業に依存した大規模開発に伴い、高まる財政や対外的な脆弱(ぜいじゃく)性が懸念されている。

IMFは1月23日~2月6日、モルディブに派遣団を送り、当局と最近の経済動向や見通し、2024年の優先政策事項について協議した。IMFは「大幅な政策変更がなければ、財政赤字と公的債務は高止まりし、モルディブは依然として対外的、全体的な債務困窮のリスクが高い」と指摘している。

観光業には、2023年11月のムイズ氏の大統領就任以降に生じたインドとモルディブの摩擦の影響も出ている。親中派のムイズ氏がモルディブに駐留するインド軍の撤退を要請したほか、一部の閣僚がSNS上でインドのナレンドラ・モディ首相を非難し、インド政府はこれに反発している。さらに、2023年のモルディブへの外国人観光客の最多出身国はインドだが、2024年1月のインドからモルディブへの観光客数は前年同月比19.4%減の1万5,003人にとどまり、ロシア、中国、イタリア、英国を下回った。

ジェトロが2月22日にインタビューしたビリンギリ島に住む地元の男性は「ビリンギリ島の開発プロジェクトには満足しており、モルディブは全ての国と友好的に協力する必要がある」と述べた。また、ジェトロが同日にインタビューしたモルディブで43年間働いているというインド人の大学教員は「インドとモルディブの経済的・政治的パートナーシップはモルディブの発展に不可欠だ。モルディブではインド人労働者と社会的なあつれきは生じておらず、あくまで政治的な緊張は政治家同士の問題にすぎない」と強調した。

写真 モルディブでは4月21日に国会議員選挙を予定しており、既に選挙キャンペーンも展開されている(ジェトロ撮影)

モルディブでは4月21日に国会議員選挙を予定しており、既に選挙キャンペーンも展開されている(ジェトロ撮影)

(ラクナー・ワーサラゲー、大井裕貴)

(モルディブ、インド)

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