全人代の台湾政策は従来路線を踏襲、台湾はあらためて中国に対話を呼びかけ

(台湾、中国)

調査部中国北アジア課

2024年03月07日

中国の第14期全国人民代表大会(全人代)第2回会議(3月5~11日)および全国政治協商会議(政協)年次総会(3月4~10日)がそれぞれ開幕した(2024年3月6日記事参照)。

3月5日に李強首相が行った政府活動報告では台湾政策について、「一つの中国の原則と『92年コンセンサス』を堅持し、両岸の融合発展を深化させ、心を一つにして民族復興の偉業をともに成し遂げる」とし、従来の内容から大きな変化はなかった。また、全国政治協商会議において王滬寧主席が行った第1回活動報告においても、過去1年の活動を振り返り、両岸の産業協力を強化し、両岸共同市場を打ち立て、両岸の融合発展を推進する、という言及にとどまった(「自由時報」3月4日)。

台湾の外交部は、3月5日に開催された定例記者会見において、両会(全人代および政協)で表明された台湾政策に対し、「旧来からの主張が繰り返されているが、台湾は中国とは互いに隷属せず、中国はこれまで台湾を統治したことはなく、台湾海峡の現状と国際的に公認されている客観的事実を変えることはできない」とコメントした。台湾の大陸委員会も3月7日に談話を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、2024年の政府活動報告はコロナ後の経済復興や社会の安定など、内政に焦点を当てた、と総括しつつ、「台湾は両岸の平和と安定を維持していく立場は一貫しており、中国に対して『両岸は互いに隷属しない』という客観的事実を正視し、硬直した政治思想を放棄し、前提を設けない対話を通じて、両岸の健全で秩序ある交流のために有利な条件を作るべき」と呼びかけた。

淡江大学両岸研究中心の張五岳主任は、3月6日に開催されたシンポジウムにおいて、「歴史上、政府活動報告の中で重大な台湾政策が示されたことはなく、活動報告中の書きぶりを一言一句過度に分析する必要はない。習近平総書記の各地方からの代表団に対する講話にも注目していたが、台湾政策に関する新たな発言はなかった。今後は、5月20日の新総統就任までが次なる注目すべき時期だ」とコメントした(「聯合報」3月6日)。

(江田真由美)

(台湾、中国)

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