模倣品対策強化に向け、ベトナムエンフォースメント機関職員向けセミナーを開催

(ベトナム)

知的資産部知的財産課

2024年03月18日

特許庁とジェトロは228日、ハノイにおいてベトナム市場管理総局(DMS)およびベトナム科学技術省監査局(IMOST)と共催で「ベトナムエンフォースメント機関職員向けセミナー」を開催した。当セミナーは、近年増加している模倣品への対策の強化を目的とするもので、ベトナム当局や日系企業の職員を含め約120人が参加した(注1)。また、約40もの現地メディアに取り上げられた。参加した日系企業からは、模倣品の取り締まりをするベトナム当局の職員に直接メッセージを伝えられる有益な機会だったとの声が寄せられた。また、ベトナム当局からも、模倣品の取り締まりを進める上で役立ったと評価を受けた。そのほか、参加した日系企業のブランド認知向上にもつながった。

写真 セミナーの様子(ジェトロ撮影)

セミナーの様子(ジェトロ撮影)

ベトナム側からはDMSIMOST、ベトナム国家知的財産庁(IP ベトナム)、税関総局(GDC)が昨今の取り組み紹介を行い、日本側はブランドオーナー6社(アシックス、キッコーマン、クボタ、コクヨ、第一三共ヘルスケア、パナソニック)がベトナムにおける模倣品対策やブランドの紹介、真贋(しんがん)判定ポイントの解説を行った。当局職員の模倣品の取り締まり実務や研修への活用を目的に真贋判定集の手交も行ったほか、模倣品と真正品のサンプル展示、国際知的財産保護フォーラム(IIPPF)(注2)作成のベトナム語啓発動画(注3)上映も実施した。

写真 日本側ブランドオーナー社の解説の様子(ジェトロ撮影)

日本側ブランドオーナー社の解説の様子(ジェトロ撮影)

DMSのグエン・タイン・ビン副局長は「企業と当局の間で多くの情報を共有することで、模倣品対策の強化につながることを期待している」と述べた。IMOSTのグエン・ニュー・クイン主任検査官は「新型コロナ禍を経て、オンラインでの権利侵害が増加し、手口も複雑化している。国民の意識向上や執行機関などの協力体制の強化、中央と地方の政府の連携が課題だ」とコメントするなど、日本企業や日本政府からのさらなる支援に期待を示した。

一方、在ベトナム日本大使館の渡邊滋臨時代理大使は「産業財産権が適正に保護されるようになれば、ベトナムの投資環境が改善し、さらなる直接投資の促進、ひいては、ベトナムの持続的な経済成長につながると考える」と述べ、模倣品対策強化がベトナムと投資国の双方に利益をもたらす点を強調した。

DMSとIMOSTは、ベトナム国内における模倣品取り締まりに関わる最も主要なエンフォースメント機関だ。DMSは、模倣品に限らず、広く市場に流通する違法・不正商品や、同商品を流通させる行為の摘発などを所管する。地方レベルでは、市場管理局として省級・県級・村級で組織され、実際の執行などを担当する。IMOSTは特許や意匠、地理的表示を含む産業財産権に関する調査、取り締まりなどを所管する。

(注1)参加したベトナム当局は次のとおり。一部の機関の役割については「ベトナムにおける模倣品流通実態調査PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」(2020年3月)を参照。

  • ベトナム市場管理総局(DMS)
  • ベトナム科学技術省監査局(IMOST)
  • ハノイ市場管理局(MSDH)
  • IPベトナム
  • 税関総局(GDC)
  • 商工省電子商取引・デジタル経済局 (iDEA)
  • 情報通信省ベトナムインターネットセンター(VNNIC)
  • 公安省サイバーセキュリティおよびハイテク犯罪防止局

(注2)IIPPFは2002年4月、模倣品・海賊版などの海外における知的財産権侵害問題の解決に意欲を有する企業・団体によって設立され、2024年3月現在で72団体・177企業が参加している。IIPPFを構成する地域・分野別の各プロジェクトでは、海外の政府機関や専門家などとの意見交換会などを実施している。

(注3)IIPPFでは海外における消費者啓発を目的に、多言語で啓発動画を制作・発信している。日本語版の動画は「IIPPF啓発WG、東南アジア地域の一般消費者向け啓発動画を公開」を参照。

(上原広夢)

(ベトナム)

ビジネス短信 02b9989dd12d07a0