CBAM報告対応が在欧日系企業の負担に

(EU、日本)

調査部欧州課

2024年02月19日

EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、注)への対応や関心について、ジェトロは2月13、14日、ドイツとオランダに拠点を持つ日系企業6社(自動車部品、鉄鋼、化学、電子部品・材料)にヒアリングした。域外からの鉄鋼製品・アルミニウム製品の輸入で、CBAMへの対応が負担となっていることが確認された。

CBAMは2023年10月に移行期間が開始。同年10~12月分のCBAM対象製品の輸入に関する初回の報告期限は、当初の2024年1月末から、システム不具合のため30日間延長されている(2024年2月6日記事参照)。この点、1月中に報告を終えた企業が多かったものの、ヒアリング時点でまだ完了していないケースもみられた。システムエラーやアクセス困難のほか、EU加盟国の管轄当局への申請に時間がかかることが要因に挙がった。報告を行う輸入者または代理人はCBAM移行期登録簿への初回のアクセス前に、輸入者の拠点がある加盟国当局に申請を行う必要がある(2023年11月1日記事参照)。加盟国によってこのプロセスにかかる時間が異なっていることが確認された。

対象製品では、スクリュー、ボルト、ナットといった細かい鉄鋼製品や、アルミ素材の輸入に関する報告が中心となっている。品番が多くて情報管理が煩雑なことや、単価に比して手間が大きく、コストが釣り合わないなどの課題が挙げられた。将来的に有機化学品やポリマー(プラスチック)などに対象製品が拡大されると、経済的なインパクトが大きくなるとの懸念も多く聞かれた。

対象製品の輸入にかかる炭素排出量のデータは、7月末のCBAM報告までは排出量の100%について、デフォルト値(既定値)を用いることができるため、生産上の実排出量を算出しなくても、報告義務を満たすことができる(2024年1月10日記事参照)。ヒアリング先では現在、デフォルト値を用いて報告を行っているケースがほとんどだった。他方、顧客の欧州企業から、実排出量の報告が必要となる今後を見据えて、現時点からデフォルト値ではなく、実排出量に基づいて報告してほしいとの要望を受けている日系企業もあるという。報告の責任を負う輸入者の立場では、移行期間中、排出量にかかる情報は第三者による認証が求められないため、生産者の情報を信じるしかないとの情報の非対称性が指摘された。これに対し、生産者側からは、機密性の高い情報が輸入者側に伝わることや、求められる排出量の情報の精度が分からないといった懸念が上っている。

(注)詳細はジェトロが2月13日に公開した調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」を参照。

(安田啓)

(EU、日本)

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