欧州委、CBAMの第1回報告の期限を1カ月延長

(EU)

調査部欧州課

2024年02月06日

欧州委員会は1月29日、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM、2023年8月31日付地域・分析レポート参照)の初回の報告期限について、登録システムの不具合によって報告を完了できなかった場合は30日間の提出延長を認めると発表した(税制・関税同盟総局プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

CBAMは2023年10月1日に移行期間が開始し、同年10~12月の初回の報告期限が1月末に設定されていた(2023年11月1日記事参照)。しかし、欧州委によると、CBAM対象品目のEUへの輸入に関する情報を報告するオンライン上のCBAM移行期登録簿のほか、EUの新輸入管理システム「ICS2」(2023年2月20日記事参照)の報告データの提出ができないというシステム上のトラブルが生じていた。この不具合を受けて欧州委は、CBAM移行期登録簿への第1回の報告が完了していない輸入者または間接的な通関代理人には報告の遅延の要請を認め、要請に基づいて1月末からさらに30日間の猶予を認めるとした。システム上のトラブルを要因とする報告の遅延に対しては、加盟国の当局による罰則が適用されることはないことも確認した。

生産者側、輸入者介さない報告方法求める

CBAMの報告制度では、EU域外の生産者はCBAM移行期登録簿への報告を行うEU域内の輸入者または代理人に輸入品の生産で生じた温室効果ガス(GHG)排出量をはじめとする情報を提出する必要がある。生産者側からは、求められる報告内容には企業の競争力に影響する機密情報が含まれているとして、輸入者側への情報提供に懸念の声が上がっている。この点、欧州委は、2023年12月22日にCBAM移行期間のGHG排出量のデフォルト値(既定値)に関する資料を公開した際(2024年1月10日記事参照)、「2024年の第2報告期間までに、報告義務の簡素化や、EU域外の生産者による特定のビジネス上のデータのCBAM(移行期)登録簿へのデータの直接提出に向けて、引き続き取り組む」としており、今後の発表を注視する必要がある。

(安田啓)

(EU)

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