米USTR、メキシコの食品工場での労働権侵害の疑いでメキシコ政府に確認要請、食品分野で初

(米国、メキシコ)

ニューヨーク発

2024年02月21日

米国通商代表部(USTR)は2月16日、メキシコ中西部ミチョアカン州の食品メーカー、RVフレッシュフーズの工場で労働権侵害の疑いがあったとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

RRMは、事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。RRMの手続きは、USMCA加盟国政府が独自に発動できるが、労働組合などの第三者機関が加盟国政府に労働権侵害を提訴することも可能だ。今回USTRは、メキシコの複数の労働組合から、RVフレッシュフーズが労働組合の同社工場への立ち入りを制限したほか、労働組合代表者の選出に介入するなどの干渉を行ったとの申し立てを受けた。

事実確認の要請を受けたメキシコ政府はUSMCAに基づき、調査を行うか否かを10日以内に返答しなければならず、調査を行う場合には45日以内に完了する必要がある。また、今回のUSTRによる確認要請をもって、米国は当該工場からの製品輸入について、両国間で労働権侵害の解消に合意するまで、最終的な税関での精算を留保できる。実際、キャサリン・タイUSTR代表は財務長官に対し、当該工場からの製品輸入にこの措置を適用するよう指示PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

なお、米国はこれまでRRMを通じて、メキシコの自動車・自動車部品企業を中心に、アパレル、鉱山開発、航空貨物企業などに対して20件の労働問題解決を要請してきたが、USTRによると、食品分野がRRMの対象となるのは今回が初めて(注)。米国からメキシコに対するRRMは特に2023年以降、発動件数が増加および対象分野が拡大しており、その動向が注目されるとともに、メキシコで事業展開を行う企業は労働関連法規の順守があらためて求められる。

これまでのRRMに基づく措置については、USTR外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますまたは労働省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのウェブサイトを参照。

(注)対象となる優先業種は、USMCAの条文では製造業(航空宇宙、自動車・同部品、化粧品、製パン業、鉄鋼・アルミニウム、ガラス、陶器、プラスチック、鍛造、セメント)、サービス業、鉱業が示されている(第31-A条)。また、USMCA施行に向けた米国内法では、自動車組み立て、自動車部品、航空宇宙、製パン業、電子機器、コールセンター、鉱業、鉄鋼・アルミニウムが示されている(合衆国法典19章4643条)。USTRは、RVフレッシュフーズもこれら優先業種に含まれるとしている(通商専門誌「インサイドUSトレード」2月20日)。RRMの動向や対応については2023年8月8日付地域・分析レポートも参照。

(葛西泰介)

(米国、メキシコ)

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