グローバルミニマム課税に対応へ、投資誘致で新たな税額控除措置

(シンガポール)

シンガポール発

2024年02月22日

シンガポールのローレンス・ウォン副首相兼財務相は2月16日、2024年度(2024年4月~2025年3月)政府予算案で、外資投資誘致の新たなインセンティブ「投資税額控除(RIC)」の導入を発表PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。RICの導入は、2025年から導入予定の「税源浸食と利益移転(BEPS)2.0」イニシアチブの第2の柱であるグローバルミニマム課税(最低税率課税)を受けて、投資先としての競争力を強化するための措置だ。

RICが対象とする投資は、(1)製造施設設置や低炭素の発電など生産性向上、(2)デジタルサービスやサプライチェーン管理などの新規拠点設置または拡張、(3)地域統括機能やセンター・オブ・エクセレンス(CoE、注1)などの新規設置または拡張、(4)商品取引会社の設置または拡張、(5)研究開発(R&D)、イノベーション活動、(6)低炭素化を目的としたソリューションの導入だ。これら活動に伴う設備投資、人件費、委託費など適格費用の最大50%を、法人税額から控除できる。RICの適用期間は最長10年間で、経済開発庁(EDB)とシンガポール企業庁(エンタープライズシンガポール)が管轄する。同税額控除の詳細については、2024年第3四半期までに発表される予定だ(注2)。

ウォン副首相は2023年2月に、グローバルミニマム課税を、対象となる多国籍企業(注3)に対して2025年から導入する方針を表明していた(2023年2月16日記事参照)。同副首相は今回の演説で2025年1月1日から、多国籍企業の子会社などの税負担が15%の最低税率となるまで課税する「所得合算ルール(IRR)」を導入し、最低税率と実効税率との差額分に対して追加納税の「国内トップアップ税(DTT)」を予定どおり課すと述べた。

同副首相はグローバルミニマム課税の導入に伴う追加税収について、「シンガポールの投資競争力を維持するために再投資する必要がある」と強調した。同副首相は、多国籍企業が経営戦略の見直しを行っている一方、海外の国々が投資誘致インセンティブの強化を図っていると指摘し、「RICを導入するとともに、新規投資や研究、イノベーション活動への支援を強化し、経済競争力を維持する」との方針を示した

(注1)センター・オブ・エクセレンス(CoE)は、企業内の異なる事業から集めた専門人材、ノウハウを集約した組織、または研究拠点。

(注2)RICについては、2024年度政府予算案の付属資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)参照。

(注3)グローバルミニマム課税の対象企業は、連結売上高が7億5,000万ユーロ以上の企業。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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