国際料理学会がマドリードで開催、日本の食文化を発信

(スペイン)

マドリード発

2024年02月27日

国際料理学会「マドリード・フュージョン(Madrid Fusión Alimentos de España)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が、1月29~31日にスペイン・マドリードのマドリード国際展示場(IFEMA)で開催された。同イベントは、世界のトップシェフや料理専門家が一堂に会するコングレス形式で、スターシェフによる実演・講演や、高級レストラン向け食材の展示など、専門性の高い内容となっている。今回のテーマは「すべてが始まる場所(原題:Donde todo comienza)」で、新たな才能とイノベーションが出合う中心地という意味が込められている。各国から選ばれた新進気鋭のシェフが料理の実演や講演を行うなど、国際性が重視されたほか、イノベーションやサステナビリティーなどのトピックに焦点が当てられた。

写真 マドリード・フュージョンの様子(マドリード・フュージョン提供)

マドリード・フュージョンの様子(マドリード・フュージョン提供)

日本からは、沖縄県宮古島出身で、同県内のレストラン、エタデスプリのシェフである渡真利泰洋氏が選ばれ、新たなスタイル「琉球ガストロノミー」の紹介を通して、沖縄の食文化の魅力について講演した。冒頭、「私の日本は、あなた方が知っている日本とは違う」と切り出し、クラウドファンディングで募った資金を活用して制作した動画を交えながら450年続いた琉球の歴史を紹介した。真っ青なイラブチャー(アオブダイ)を紅麹(べにこうじ)でマリネし、葉に包んで蒸すなど宮古の素材をふんだんに使った料理を実演。新しい食材を模索する業界関係者を巧みに引き付けた。

写真 渡真利氏のプレゼンテーション「Okinawa」の様子(ジェトロ撮影)

渡真利氏のプレゼンテーション「Okinawa」の様子(ジェトロ撮影)

また、琉球の歴史と切っても切れない酒として、泡盛を紹介。3年熟成の古酒の試飲を伝統的な酒器で提供した。スペインにおける日本酒や日本産ウイスキーの輸入額は、過去10年で3倍に増加し、右肩上がりだが、その一方で焼酎は横ばい。知名度の低さやブランディングが進んでいないことが原因といわれている。スペインでは、蒸留酒は基本的に食後酒として認識され、ウイスキーやジン、ラム酒、ウオッカ、マール(ワインぶどうの搾りかすを原料とする蒸留酒)、甘いリキュールなどが人気だ。同氏の講演では、こうした現地との嗜好(しこう)の違いを考慮して、沖縄の食文化ストーリーの一部として泡盛を紹介し、聴衆の関心を集めた。

出展エリアでは、日本食材輸入卸大手コミンポートがブースを設置し、日本企業がわさびやソースを用いた料理の実演や試食、日本酒の試飲などをとおしてプロモーションを行った。日本企業の担当者からは、「通常は欧州統括拠点から商品の販売状況を見ており、実際の営業に関わることは難しい。こうしたイベントは現地のレストラン関係者など新たな客層と接触したり、自社商品を直接紹介したり反応を見ることができる貴重な機会だと感じる」などの意見が聞かれた。

写真 コミンポートの出展ブースの様子(マドリード・フュージョン提供)

コミンポートの出展ブースの様子(マドリード・フュージョン提供)

次回のマドリード・フュージョンは、2025年1月27~29日に開催予定。

(田中佳恵)

(スペイン)

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