制裁緩和の継続に暗雲、野党候補の大統領選参加不可の判決で

(ベネズエラ、米国)

ボゴタ発

2024年02月08日

ベネズエラ大統領選挙への野党候補の参加を否定する最高裁判決が出されたことで、米国による経済制裁の部分解除(2023年10月20日記事参照)の継続が危ぶまれる状況となっている。

最高裁は1月26日、2023年10月に行われた予備選挙で大統領選の統一候補に決定した(2023年10月24日記事参照)マリア・コリーナ・マチャド氏(ベンテ・ベネズエラ党)を含む野党関係者に対する、公職就任資格停止措置の撤回を求める申し立てを不適とする判決を下した。

これを受けて、米国財務省外国資産管理局(OFAC)は、2024年1月29日付で一般ライセンス43A外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発行し、国営金採掘公社ミネルベンとの取引に関する緩和措置を即時停止した。また米国務省は1月30日に声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表し、野党関係者に対するベネズエラ政権側の対応について、2023年10月にバルバドスで行われた与野党対話(2023年10月20日記事参照)での大統領選挙の実施に関する合意に反するとの考えを示した。さらには、「今年の大統領選で全ての野党候補が立候補できなければ、同年4月18日を期限としている制裁緩和措置を更新しない」と警告した。

現地報道によると、与野党対話においてニコラス・マドゥロ政権側の代表だったホルヘ・ロドリゲス国会議長は1月30日、バルバドスでの与野党合意については順守していると主張し、これまで言及していなかった大統領選の日程の検討への着手を表明した。また、大統領選と同日に、ベネズエラに対する国際的な制裁措置への支持を問う国民投票を行う可能性も示唆した。なお、マチャド氏が参加して大統領選が行われる場合、同氏が選出される可能性は高いことから、マドゥロ政権にとっては同政権の継続が危ぶまれるよりも、むしろ制裁の復活を選ぶのでは、との指摘もある。

2022年末に米国シェブロンに対し制裁緩和が行われたことで、2023年上半期だけで12億ドル以上がベネズエラに流入したとみられており、同国経済の安定につながった。また、米国の緩和措置によって国営石油会社PDVSAは米国企業との取引が可能となり、対米原油輸出の道が開けた。調査会社エコアナリティカは、2024年のベネズエラのGDP成長率について、制裁緩和が継続した場合は9.7%、停止した場合は4.4%と予想している。同社のルイス・バルセナス氏はX(旧ツイッター)で、制裁復活による国家収入の低下が政府の財源不足を引き起こし、国の補助金に依存している国民の生活への影響や、為替市場への介入が困難となることで、現地通貨ボリバルの下落や物価上昇が生じるリスクを指摘している。

(豊田哲也、マガリ・ヨネクラ)

(ベネズエラ、米国)

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