米国の対ベネズエラ制裁が一部緩和、石油取引が可能に

(ベネズエラ、米国)

ボゴタ発

2023年10月20日

米国財務省外国資産管理局(OFAC)は10月18日、制裁対象となっているベネズエラの石油・ガス産業での取引を6カ月間認めるライセンスを発行した。ライセンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは6種類で、国営金採掘公社ミネルベンとの取引や、ベネズエラ国債と国営石油公社(PDVSA)債の二次市場での取引などについても緩和した。

前日に行われたベネズエラ政権と反政府派によるいわゆる与野党対話で大統領選挙に関する合意が行われたことを受けたもので、同日の米財務省プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでブライアン・ネルソン財務次官は「(ベネズエラ現政権が)コミットメントを順守しない場合、米財務省はこの措置を修正、取り消しを行う用意がある」とコメントした。

与野党対話は10月17日、バルバドスでノルウェー代表の進行により、米国などの代表が加わるかたちで行われた。同日にメディアで公表された「政治的権利の推進と選挙の保証に関する部分的合意」には、2024年下半期に大統領選挙を行うことや、EU、国連選挙パネル、アフリカ連合(AU)、カーターセンターからの監視団の招請、候補者の安全保証、選挙資金の透明性の確保、公平な報道などが盛り込まれている。

10月22日に野党側は大統領選の統一候補を選出する予備選を予定しているが、会計検査院から公職への就任資格を剥奪されたマリア・マチャド氏(ベンテ・ベネズエラ党)が選出される可能性が高い。同氏の大統領選への立候補可否について、与野党対話の中では不透明となっており、仮に立候補できないような事態となれば、米政府による制裁緩和措置は終了するとみられている。

制裁緩和によって、米国企業はPDVSAとの取引が可能となり、米国内での石油供給や価格の安定化につながる可能性がある。ベネズエラにとっては、アジア向け原油のディスカウント販売を避けることができる。与野党対話の実施については、その前日にニコラス・マドゥロ大統領が突然発表したもので、翌日にはOFACライセンスが発行された。米国とベネズエラはこれまでも制裁緩和に向けた非公式な会合を世界各地で行っていると報じられていたが、ロシアのウクライナ侵攻に加え、中東情勢の悪化も両国の対話を加速させる要因になったとみることができる。

(豊田哲也、マガリ・ヨネクラ)

(ベネズエラ、米国)

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