イタリア発の生成AI、今夏までに運用開始へ

(イタリア)

ミラノ発

2024年02月05日

イタリアのスタートアップのアイジーニアス(iGenius)は1月24日、同国の省庁や大学などで構成されるコンソーシアムのチネカ(Cineca)と、イタリア語の大規模言語モデルの生成人工知能(AI)「モデロ・イタリア(Modello Italia)」を開発することを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。企業や行政が、コンプライアンス、プライバシー、国家安全保障規制を担保しつつ、医療、金融、安全保障などの主要分野で生成AIを活用することを目的にしている。現地報道によると、「モデロ・イタリア」は現在、チネカが管理するスーパーコンピュータ「レオナルド」により訓練されており、今夏までには運用が予定されている。

チネカは、イタリアの2省庁と70の大学を含む118の公共団体で構成される非営利のコンソーシアム。アイジーニアスは、2016 年から生成AI技術の研究開発に携わっており、AI分野の有力企業として、IT関連に強い米国調査会社のガートナーに評価されている。

アイジーニアスによると、「モデロ・イタリア」は、偏見や差別の低減、高い安全性の確保のほか、EUのAI法案(2023年12月13日記事参照)など国内外の法規制にも準拠するように設計される。

1月24日付「ラ・レプブリカ」紙では、アイジーニアスのウルジャン・シャルカ最高経営責任者(CEO)が「現在、主要な言語モデルは英語で訓練されており、英語文化のバイアスがかかっている。何十億もの人々が毎日使用し、そのバイアスが広がることで問題が発生することを懸念している」と、イタリア語やイタリア文化を背景にした大規模言語モデルを開発することの意義を説明している。

イタリア経団連(Confindustria)の情報通信技術(ICT)企業下部組織の調査によると、2022年のイタリアのAIの市場規模は、前年比21.9%増の約4億2,200万ユーロだった。また、2025年までの平均年間成長率は22%、2025年には7億ユーロの市場規模に達すると見込まれている。

イタリアが議長国を務める2024年のG7においても、AIは重要議題として位置づけられている。ジョルジャ・メローニ首相も、AIが労働市場などに与える影響について繰り返し警鐘を鳴らしており、首相自ら関係者と積極的に顔合わせをしている。1月18日には、政府のAI委員長も同席のうえ、米国マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏と会談し、AIによる機会とリスクについて議論したほか、ガバナンスの必要性についても言及した。また、同じテーマで、2023年9月にはリンクトインの創業者リード・ホフマン氏、同年6月には米国電気自動車(EV)大手テスラのCEOなどを務める起業家のイーロン・マスク氏とも会談している。

(平川容子)

(イタリア)

ビジネス短信 ca3395c05a79583b