2024年「中央1号文件」を発表、食料安全保障の確保に取り組む

(中国)

北京発

2024年02月09日

中国政府は2月3日、2024年の「中央1号文件」(注1)である「『千万事業』(注2)の経験を生かし効率的に農村の全面的な振興を推進することに関する意見」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。中央1号文件は、2004年以来21年間連続で「三農」(農業、農村、農民)問題を取り上げたことになる。

同意見では、国の食料安全保障を確保することと、大規模な貧困状態への逆戻りが生じないようにすることを重要課題とした。また、農村の産業発展、農村建設、農村ガバナンスのレベル向上に重点を置き、科学技術と改革を通じて、農民の所得向上への取り組み強化と総合的な農村振興を推進するとした。

食料安全保障の確保については、(1)穀物と重要な農産物の生産状況の把握、(2)耕地保護制度の徹底(注3)、(3)農業インフラの整備強化、(4)科学技術による農業支援の強化、(5)現代農業経営体系の構築、(6)穀物と重要な農産物のコントロール能力強化、(7)食品ロス対策の継続、などが盛り込まれた。(1)について、穀物の増産については単位面積当たりの収穫量向上に重点を置くとし、食料の生産量は6億5,000万トン以上を確保する(注4)とした。また、大豆の生産拡大を強化し、高油分・高収量品種の開発を支援するとした。

農村の産業発展レベルの向上については、農村における一次産業・二次産業・三次産業の融合発展を促進し、各地方が地域の実情に応じた特色ある産業を発展させるとともに、各地方の特産品ブランドの創出を支援するとした。また、農産物加工業の高度化を推進すること、農民の所得向上に向けた措置を強化すること、なども打ち出された。

農村建設のレベル向上については、県政府の所在地を中心、その周辺の農村を結節点とする県域(注5)経済体系を構築し、県全体の雇用能力を拡大し、農業から非農業への移転人口の市民化を推進するなどとした。一方で、同時に農村におけるインフラの弱点補強、学校や医療機関など公共サービス体系の整備を推進するとした。

(注1)「中央1号文件」は、中央政府が毎年年初に発令する第1号の政策文書で、重要度が高い。同文件では、2004年から「三農」問題が取り上げられている。

(注2)「千万事業」とは、習近平国家主席が浙江省党委書記を務めていた時代に、農村の生産、生活、生態環境の改善を中心に推進した「モデルとされる千の村、整理整頓された万の村」という新農村建設の事業。

(注3)具体的には、耕地の面積維持、品質確保、生態保護に関する制度を整備し、耕地および永久基本農地の保護、耕地の占用と補償を均衡させる管理制度の整備、黒土地(肥沃な黒色の土壌、農業に適している)保護の強化などに取り組むとした。

(注4)国家統計局の発表によれば、2023年の中国の食料年間生産量は6億9,541万トンで、前年比1.3%増となり、9年連続で6億5,000万トン以上を維持している。

(注5)中国の行政区分は、省級、地級、県級、郷級の4つの階層で構成される。県域は、行政単位である県の管轄区域内の総称。県には郷、鎮が置かれており、郷は各村で構成される。

(張敏)

(中国)

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