日本の漫画が原作のドラマを初めて配信

(トルコ)

イスタンブール発

2024年02月26日

トルコで初めて日本の漫画を原作にしたドラマ「クルトゥルシュ・リセスィ(Kurtuluş Lisesi)」が配信された。原作となった漫画「リミット」〔すえのぶけいこ作・講談社、トルコ語版はアルカダシュ(Arkadaş)社〕は、キャンプへ行く途中に事故に遭った女子高生たちのサバイバルを描いた作品で、日本では2013年7月にテレビ東京でテレビドラマ化された。トルコの地場OTTプラットフォーム(注)「ゲイン(Gain)」で、2024年1月19日から配信が開始されている。

画像 トルコドラマ版「クルトゥルシュ・リセスィ(Kurtuluş Lisesi)」(ハン・メディア提供)

トルコドラマ版「クルトゥルシュ・リセスィ(Kurtuluş Lisesi)」(ハン・メディア提供)

画像 オリジナル漫画1巻表紙(講談社提供)

オリジナル漫画1巻表紙(講談社提供)

トルコは米国に次ぐ世界2位のドラマ輸出国といわれるコンテンツ大国だが、国内での競争は激しく、年間100本以上の放映作品のうち、ヒットするのは1割以下といわれている。

1作品当たりの話数・放映時間が長く、一から脚本を作成するのには多大な労力がかかること、激しい競争下でより優れた脚本が求められることから、近年は国外作品のリメーク需要が高まりを見せている。その中で今回、初めて日本の漫画が原作に選ばれた。同作品に関し、ジェトロは2024年2月5日までに複数の関係者にインタビューを行った。

原作者で漫画家のすえのぶけいこ氏はインタビューに対し、トルコでは日本の漫画が欧米に比べ、まだ普及しておらず、漫画を原作としたドラマ化も前例がない中で、「企画書やあらすじを見た時に、文化の違う国でも自分が伝えたいテーマを映像で表現してくれそうだという熱意を感じた」と喜びを語った。また、漫画は世代や国境を超える力を持ち、日本が世界に誇る文化だとし、「漫画を読む習慣があまりない国の人にも、さまざまな媒体を入り口に漫画や日本の文化に興味を持ってもらえればうれしい」と期待を寄せた。

本作の制作会社ハン・メディア・ヤプム(han medya yapım)の代表で、自身も俳優のトルガハン・サイシュマン氏(Tolgahan Sayışman)はドラマ化について、「日本の漫画は世界で人気を博しているにもかかわらず、これまでトルコでドラマ化の実績がない点に着目した」とコメントした。また、制作時には英語を介した3言語でのコミュニケーションに苦労したが、「トルコの視聴者を魅了しつつ、原作のテーマやメッセージに忠実であり続けられるよう努力した」と実現に至るまでのプロセスを振り返った。

写真 ハン・メディアのサイシュマン氏(ハン・メディア提供)

ハン・メディアのサイシュマン氏(ハン・メディア提供)

もう一人の立役者がヘセ・メディア(HECE Medya)の執行役員セレン・エルゲネコン(Ceren ergenekon)氏だ。同氏は、過去に大ヒットしたトルコ版「マザー(Mother)」をはじめとする日本ドラマのリメークに携わり、日本トルコ(以下、日ト)のコンテンツ分野の架け橋として活動している。日本を「ストーリーパラダイス」と表現する同氏は、「日本の作品は未知のアイデアにあふれている。日ト文化の類似点を見つけ、物語が伝えたい感動をトルコでも同じように視聴者に届けられる作品選びが重要だ」とリメーク成功の鍵を語った。

(注)Over The Topの略称で、インターネット回線によってアクセスできるコンテンツ配信サービスの総称。

(友田椋子、エミネ・ギョンジュ)

(トルコ)

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