天然ガス開発再開に期待も、治安情勢は一進一退

(モザンビーク)

マプト発

2024年02月26日

モザンビークでは2月に入り、沈静化していた北部のカーボデルガード州内の治安状況に懸念が深まっている。メディア報道で、複数の郡で武装勢力による地元コミュニティーへの襲撃や、モザンビーク国防軍との戦闘などが報じられた。

国際移住機関(IOM)によると、2月8日から20日にかけて、同州中部から南部のマコミア郡、メクーフィ郡、シウーレ郡で武装勢力による襲撃事件が発生し、2月21日時点でこれらの郡から1万3,088人の避難民が発生している。モザンビークのフィリッペ・ニュシ大統領は2月21日、報道に対し、武装勢力が南下傾向にあることを認めた。同大統領は翌22日、同州南部アンクアベ郡の軍駐屯地を訪問し、テロリストの南下活動を阻止するよう部隊を激励した。

米国国防総省内の戦略研究所「アフリカセンター」の分析によると、2023年の1年間でモザンビーク北部でのイスラム系武装勢力による暴力事件は127件発生、件数は前年比で71%減少していた。加えて、モザンビーク、南部アフリカ開発共同体(SADC)、ルワンダによる連合軍は、武装勢力の支配地域の90%を奪還し、同勢力をカーボデルガード州沿岸のマコミア郡に封じ込めることに成功した。「アフリカセンター」は、今後の武装勢力の回復力を懸念事項とし、一連の進捗が2024年も維持できるかどうかをポイントとしていた。

2023年の治安改善を受けて、2024年2月7日に、フランス資源大手トタルエナジーズのパトリック・ブヤンヌ会長兼最高経営責任者(CEO)は同社の2023年度業績発表において、モザンビーク北部カーボデルガード州におけるエリア1天然ガス開発プロジェクトを2024年内に再開すると発言したばかりだった。同プロジェクトは、イスラム系武装勢力による同州の治安情勢悪化に伴い、コンソーシアム筆頭のトタルエナジーズが2021年4月に「不可抗力」を宣言し、中断状態にある(2021年4月30日記事参照)。

プロジェクト再開への期待が高まる一方、治安情勢は一進一退の様相を見せており、地元住民や政府の警戒が高まっている。

(松永篤)

(モザンビーク)

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