日本企業注目の中東3カ国、非石油分野で協業にチャンス、ジェトロ・中東所長ウェビナー開催

(中東、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、トルコ、日本)

調査部中東アフリカ課

2024年02月15日

ジェトロは2月13日、ウェビナー「現地所長が語る!-2024年の中東ビジネスの展望-」を開催した。「2023年度 海外進出日系企業実態調査(中東編)」で「今後の注目国」トップ3だったアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビア、トルコから、ジェトロのドバイ事務所、リヤド事務所、イスタンブール事務所の各所長が登壇し、最新動向と今後の展望について解説した。解説の概要は次のとおり。

UAEでは、2O23年は原油価格が政府予想より高位で安定し、消費者物価指数(CPI)も低く抑えられ、総じて経済は好調だった。UAE中央銀行は、2024年度は5.7%の高いGDP成長率を予想している。産業多角化にも積極的に取り組んでおり、GDPで石油部門の割合は3割となっている。また、2023年には国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)がドバイで開催され、締約国から「化石燃料からの移行」について合意を取り付けるなどのリーダーシップが光った。

UAEはデジタルや医療、水、食料安全保障、宇宙の分野に関心が高く、日本との協業にも期待が持てるとした。包括的経済連携協定(CEPA)締結を積極的に進め、貿易総額の95%をCEPAでカバーすることを目指しているという。一方、「全方位外交」志向のUAEだが、イスラエル・パレスチナ問題、ロシアによるウクライナ侵攻、米中関係の緊迫化の中で難しいかじ取りが求められている。

サウジアラビアでは、2023年9月まではイランとの国交正常化や、シリアのアラブ連盟復帰、イスラエルとの対話ムードなど、中東域内の融和ムードが広がり、その中心として存在感を見せたが、10月のイスラエル・ハマスの衝突でその機運が途絶えた。また、予算編成時に高めの原油価格を想定した結果、財政収支が赤字に転落し、IMFによると、2023年のGDP成長率は前年の8.7%から大きく落ち込んで0.8%となった。

2024年度も油価の変動が財政収支に影響する構造は変わらず、非石油部門の成長がより重要になっている。投資を引き続き成長戦略の中軸に位置付けており、外資系企業の誘致や公的投資基金(PIF)による投資の強化、スマートシティー、高級リゾート、巨大エンタメなどギガ(超大型)プロジェクトを通じて成長戦略を描く。イノベーション創出など新産業の育成、グリーン、女性の社会進出、ヘルスケアなどに関連する新たなビジネスチャンスに日本企業は注目している。一方、リスクとしては、原油価格の動向に加え、ムハンマド皇太子(首相)への権力集中、パレスチナ問題などが不安定とした。

トルコでは、2023年の大統領選でエルドアン大統領が僅差で勝利した後、金融政策を転換し、以降、経済は軟調に推移しているものの、高金利、インフレ、通貨安の3重苦は継続している。それでも、中東有数の人口と経済規模を誇り、IMFは2023年のGDP成長率(見通し)を4.0%とした。外交面では、周辺国との関係をつかず離れずの独立性を保ちながら、微妙なバランスの上で展開し、国際政治で存在感を高めている。

トルコは地域有数の製造業の拠点で、特に欧州市場への供給基地として存在感が大きい。トルコの製造業の課題は一層の産業高度化、付加価値の向上だとした。また、エネルギーの輸入依存が高く、経常収支の赤字要因となっているため、グリーンエネルギー、カーボンニュートラルへの取り組みが積極的に進められている。若年層の多さと勤勉で豊富な労働力、旺盛な消費意欲、宗教的制約の寛容さ、幅広い産業構造を持ち、欧州市場のルールに即した製品を生産していることや、物流ハブとしての機能もある点も強みになっている。さらに、トルコは歴史的経緯もあって親日的な国民性で、日本企業の持つ技術力や資金力、信用力を受け入れやすい素地があるとした。

同ウェビナーは2月20日から4月22日までアーカイブで配信する。

(中口克哉)

(中東、アラブ首長国連邦、サウジアラビア、トルコ、日本)

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