BASF、中国・新疆での合弁事業から撤退を発表

(ドイツ、中国、米国)

調査部欧州課

2024年02月21日

ドイツ化学大手のBASFは2月9日、中国・新疆ウイグル自治区での合弁事業からの撤退を加速すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同事業は、化学製品を製造する新疆中泰グループ(Xinjiang ZhongTai Group)の子会社の新疆美克化学工業(Xinjiang Markor Chemical Industry)との合弁会社により展開しているもので、2016年から1,4-ブタンジオール(BDO)とその川下製品ポリテトラヒドロフラン(Poly THF)を生産している。

BASFは発表で、既に2023年第4四半期(10~12月)に新疆の合弁会社の持ち分の売却手続きを開始していたとした。同社はBDOに関する戦略の一環として、BDOとその川下製品に関する市場環境やカーボンフットプリントについてアセスメントを行っていた。その結果、BDOは世界的に見て供給過剰なことに加え、新疆では石炭を原料に製造しているため、生産過程で多量の二酸化炭素(CO2)を排出していることなどから、合弁事業からの撤退を進めていた。

これに加えて、BASFは新疆での人権状況に言及。合弁会社では「会社の内外からの定期的な監査などでは、人権侵害の証拠はこれまで全く見つかっていないが、合弁相手(新疆美克化学工業)によるBASFの価値観と相いれない行為を示す深刻な主張を含む調査結果が最近公表された」とした。「合弁会社の従業員が人権侵害に関与していたという証拠は見つからなかった」としながらも、このような状況から合弁会社の持ち分の売却手続き加速という判断に至ったと説明した。

今回のBASFの発表に先立つ2月2日、ドイツ公共放送ZDFと「シュピーゲル」誌は合同調査の結果、新疆美克化学工業の従業員がウイグル族の監視や抑圧活動に参加していたことが明らかになったと報じ、BASFへの批判が高まっていた。

VWの新疆での事業にも批判高まる

新疆では、フォルクスワーゲン(VW)も上海汽車(SAIC)との合弁事業を展開しており、同事業でのウイグル族への人権侵害の懸念がたびたび指摘されていた。VWは2023年12月、人権擁護関連のコンサルティングなどを行うレーニング(Löning)による「強制労働の証拠や示唆は見つからなかった」との調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。しかし、「ハンデルスブラット」紙(2月14日)がSAICによる新疆トルファンでのテストコース建設で強制労働が行われた可能性を報じた。また、VWグループのポルシェ、ベントレー、アウディの自動車数千台が米国のウイグル強制労働防止法(UFLPA)に基づき、米国の港湾で輸入を差し止められたとも報じられており(2024年2月16日記事参照)、VWの新疆での事業への対応が注目されている。

(二片すず)

(ドイツ、中国、米国)

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