中国発の衣料品ECサイトのシーイン、米シアトル近郊に新オフィス開設予定、米国での事業拡大に注力

(米国、中国、シンガポール)

ニューヨーク発

2024年02月15日

衣料品の電子商取引(EC)を手掛ける中国発のSHEIN(シーイン)は2月8日、米国ワシントン州シアトル市近郊のベルビュー市にオフィスを開設し、米国での事業を拡大すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同オフィスは米国内での物流拠点のハブとして機能し、現地でローカライゼーションを進めることで、米国内の顧客により迅速な配送を実現するとしている。2024年末までに50人以上の雇用を見込み、同社が全米で抱える従業員数は1,500人以上となる予定だ。

シンガポールに本社を置くシーインは、最新の流行を意識したデザインの衣料品を低価格で販売するファストファッションブランドとして知られており、若年層の消費者を中心に支持され、急速に成長してきた。米国やブラジル、アイルランド、中国南部などの主要拠点から150カ国以上の顧客にサービスを提供している。その中でも最大の市場は米国だ。

同社は中国以外でのサプライチェーンの多様化を推進するべく、米国での事業拡大を図っている。これまでもロサンゼルスや首都ワシントン、サンディエゴなどに拠点を構えて事業を展開してきたほか、カリフォルニア州に新たな物流拠点の建設を進めている(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版2月7日)。

また、こうした事業の拡大と合わせ、米国で新規株式公開(IPO)の申請を行い、資金調達にも取り組んでいる。当初900億ドルの企業評価額を目指すとしていたが(2023年11月30日記事参照)、ファッション業界の競争激化や規制当局の監視などを背景とした投資意欲の減退を反映し、同社の評価額は450億ドル程度まで引き下げられる可能性があると報じられている(ブルームバーグ1月25日)。

シーインのIPOを巡っては、米国議会からウイグル族による強制労働の可能性の懸念が示されていることに加え、「デミニミス・ルール」(注)と呼ばれる非課税基準額以下での輸入を利用して他の小売企業に比べて関税の支払い額を低く抑えていることが問題視されている(2023年8月30日記事参照)。これを受け、シーインは米国連邦政府へのロビー活動を強化しているもようだ。米国の政治資金に関する調査を行うオープンシークレッツは、シーインが2023年第2四半期(4~6月)にロビー活動に前期の2倍以上となる60万ドルを費やし、この金額は2023年8月時点で業界トップだったと明らかにしている。

なお、シーインのほかにも、中国発の動画共有アプリTikTokが同社のアプリ内で直接商品を購入できるECサービスを米国で開始するなど(2023年9月20日記事参照)、米国の低価格市場で中国発企業のプレゼンスが高まっている。

(注)米国では、輸入貨物の申告額が非課税基準額(デミニミス)以下の場合、原産地などの情報を申告せずに輸入可能となっている。デミニミスは2016年に成立した「2015年貿易円滑化・貿易執行法」により、それまでの200ドルから、現在の800ドルに引き上げられた。

(樫葉さくら)

(米国、中国、シンガポール)

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