欧州委、農薬使用削減法案を撤回へ、農業生産者への支援強化の動き

(EU、ウクライナ)

ブリュッセル発

2024年02月13日

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は2月6日、欧州議会本会議に出席し、2030年までに化学農薬の使用量を50%削減するとした規則案(2022年6月28日記事参照)を撤回する方針を表明した。農業生産者が強く反発していた同規則案は、欧州議会が2023年11月に第一読会で事実上否決し、EU理事会(閣僚理事会)での協議も停滞していた。同委員長は同時に、農薬の使用削減に取り組み、農業と環境保護の両立に向けた意欲をあらためて示した。

EU加盟国と連携し、農業生産者の抗議活動への対応急ぐ

EU各国での農業生産者の抗議活動を受け、欧州委はこのところ農業関連の提案を相次いで行っている。1月31日には、現行のウクライナ産農産物に対する輸入関税の一時停止措置を1年間延長する規則案を提案(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAなど6団体の要請(2024年1月31日記事参照)もあり、延長後は同措置の影響を特に受けている鶏肉や鶏卵、砂糖について、2022年と2023年のウクライナからの輸入量の平均を上限とするとした。6団体は同日付声明で、生産者にとって不十分な内容で、穀物や油糧種子についても上限を設定することなどを要請。規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

また、欧州委は同日、共通農業政策(CAP)の直接支払いの受給に当たって生産者に課す農地の4%を休耕地とする義務について、2024年初めより1年間、一定条件下で免除するとした実施規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提案(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同規則案はEU加盟国による審査を経て欧州委の採択後、EU官報掲載翌日に発効する。

さらに、フォン・デア・ライエン委員長は2月1日の特別欧州理事会(2024年2月6日記事参照)後の記者会見で、2024年上半期の議長国ベルギーと連携し、2月26日のEU農水相理事会で、生産者の適正な所得や、EU域外産品との公正な競争条件の確保、規制順守に伴う生産者の負担軽減に関する提案を行うと発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ベルギーのアレクサンドル・ド・クロー首相とオランダのマルク・ルッテ首相とともに同日、COPA-COGECAなど農業団体代表と面会して意見を聴取した。同委員長は同じく1日、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とも会談し、同大統領は生産者の適正な所得確保に向けてEUレベルでの法整備(注)や、域外産品のEU基準の順守徹底などを要請したと、会談後の記者会見で述べた。

(注)フランスは2018年、農業生産者と取引先の関係の是正や適正な価格設定、生産者の所得向上などを目標とするエガリム(EGalim)法を施行。

(滝澤祥子)

(EU、ウクライナ)

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