欧州委、2030年までに化学農薬の使用量を50%削減する規則案発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年06月28日

欧州委員会は6月22日、2030年までにEU域内全体での化学農薬の使用量を50%削減するとした規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。「欧州グリーン・ディール」と「Farm To Fork戦略」(2020年8月28日付地域・分析レポート参照)に沿って、現行の「持続可能な農薬の使用に関する指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を加盟国に直接適用できる「規則」とし、公衆衛生の向上や、生物多様性の保護強化、より持続可能な食品システムの構築を目指す。各加盟国には拘束力のある削減目標が課されることとなり、その設定に当たっては、その国固有の事情が考慮されるものの、欧州委は最低でもそれぞれ35%以上の削減を求めるとした。

規則案では公園、運動場といった公共スペースや環境保護が必要とされている区域、その周囲3メートル以内で、化学農薬の使用を全面的に禁止とした。また、化学農薬使用とそれに伴うリスクの削減の手段としては、(1)より危険性が高い化学農薬の販売禁止、(2)総合的病害虫・雑草管理(IPM、注)に従って生物的防除(害虫の天敵を活用)といった、化学農薬に代わる技術の開発・普及、(3)有機農業の推進、(4)精密農業や新技術の活用を挙げた。

農業分野では、化学農薬は「最終手段」として使用が認められるものの、IPMや代替手段を推進する。また、EU共通農業政策(CAP)を財源として、ドローン、GPSを装備した散布機、除草ロボットなどの購入補助や助言サービスの実施といった、農業事業者への化学農薬使用削減の取り組みを支援する。さらには、EUの研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」や「デジタル・ヨーロッパ・プログラム」などを活用して、IPMやデジタル・ソリューション関連の研究開発を推進する。

生産者側は代替手段がないままの使用禁止農薬の増加などを懸念

欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体COPA-COGECAは同日付の声明で、規則案の趣旨にはおおむね賛同するものの、削減方法や技術的な代替策、農業従事者への支援枠組みについては、情報が少ないと不満を示した。規制強化が使用量削減の解決策ではなく、十分に効果がある代替品がないにもかかわらず、さまざまな農薬を使用禁止にすることは効率的ではないと主張。化学農薬使用量50%削減という目標を今後8年間で達成するとしたが、環境へのリスクが低いとされる手段や製品の中には市場に出るまで平均で10~15年かかるものもあり、低負荷の農薬や化学薬品を用いる防除法の登録の簡素化、迅速化や細分化が重要だとした。このほか、同規則によりEU域内のみで世界の他の地域より一段と厳しい農薬使用規制を行う可能性があるが、EUの農業の競争力や強靭(きょうじん)さが失われる懸念もあり、その対応が含まれていないと指摘した。

さらに、農業部門もウクライナ情勢など国際的な危機の影響を受ける中、近年、農業に関係する複数の環境関連政策が発表され、規制が増えている現状を踏まえて、欧州委に対して、欧州グリーン・ディールが農業部門に与える影響に関する包括的な調査の実施を求めた。

(注)病害虫・雑草などが発生しにくい環境を整えつつ、病害虫が発生すれば生物的防除などの防除方法を組み合わせ、環境への負荷を軽減しつつ、病害虫の発生を抑制する防除体系のこと。

(滝澤祥子)

(EU)

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