EIU発表の2023年民主主義指数、中東・北アフリカは前年より低下

(中東、北アフリカ)

調査部中東アフリカ課

2024年02月29日

英国「エコノミスト」誌の調査部門エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)が2月15日に発表した「2023年民主主義指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」によると、中東・北アフリカ(MENA)地域の同指数は前年比0.11ポイント減の3.23で、2006年に同指数発表が始まって以来、最低のスコアとなった。世界の総合指数の平均は5.23(前年比0.06ポイント減)で、MENA地域は地域別で最下位となっている。

同指数は167カ国・地域を対象に、選挙過程と多元性、政府機能、政治参加、政治文化、市民の自由度の5つの指標でポイントを付けて、最低0~最高10の総合指数を出し、各国・地域の民主主義の状態をランク付けしている。総合指数が4以下は「独裁政治体制」、4.01以上6以下は「混合政治体制(独裁の性格と民主主義が混在する制度)」、6.01以上8以下は「欠陥のある民主主義」、8.01以上は「完全な民主主義」に分類される。

MENA地域に分類されている20カ国のうち、「完全な民主主義」の国はなく、イスラエルが唯一、「欠陥のある民主主義」となっている。モロッコとチュニジアは「混合政治体制」で、その他の17カ国は「独裁政治体制」に分類されている。なお、EIUでは西ヨーロッパに分類されるトルコは「混合政治体制」となっている(MENA地域20カ国とトルコの総合指数と順位は添付資料表を参照)。

このMENA地域20カ国中8カ国で、総合指数が前年よりも低下した。中でもスーダンは2023年4月の軍事衝突(2023年4月17日記事参照)の影響により、前年比0.71ポイント減と最も低下の幅が大きく、パレスチナ(0.39ポイント減)、クウェート(0.33ポイント減)が次いだ。イスラエル(0.13ポイント減)では、ベンヤミン・ネタニヤフ首相が推し進めていた司法改革法が2024年1月に最高裁判所によって無効と判断されたものの(2024年1月4日記事参照)、政府機能の指標の悪化に影響した。

一方、前年より総合指数が改善したのは、前年比0.11ポイント増となったアラブ首長国連邦(UAE)のみだった。UAEでは、2023年10月に実施された連邦諮問評議会(国会に相当)の選挙で女性の代表者の割合が増加したことから、政治参加の指標が改善した。同国では、2019年に大統領令により同評議会の定数(注)の男女比が均等になるように定められている。

(注)定数40のうち、20は各首長国の首長の勅選、残り20は選挙によって選出される。

(稲山円)

(中東、北アフリカ)

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