日系宇宙開発スタートアップのアストロスケール、米ロケットラボのロケットで衛星打ち上げに成功

(米国、日本)

調査部米州課

2024年02月27日

米国のロケット打ち上げ企業のロケットラボ(カリフォルニア州ロングビーチ)は2月18日、同社の小型ロケット「エレクトロン」で、日系宇宙開発スタートアップのアストロスケールの、スペースデブリ除去実証衛星の打ち上げに成功したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

今回打ち上げられたのは、商業デブリ除去実証衛星のADRAS-J。大型のスペースデブリ(宇宙ごみ、以下デブリ)除去などの技術実証を目指す、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の商業デブリ除去実証フェーズIの契約相手としてアストロスケール(本社:東京都墨田区)が選定され、本機が開発された。衛星軌道への投入後は、日本のロケットを用いてデブリ除去を実証するとともに、長期にわたり放置されたデブリの撮影を行う。同社によれば、本ミッションは、実際のデブリへの安全な接近を行い、デブリの状況を明確に調査する世界初の試みだ。

ADRAS-Jを開発したアストロスケールは、持続可能な宇宙経済圏を築き、軌道のデブリを除去・低減するため、2013年に設立された。衛星の寿命延長、故障機や物体の観測・点検、衛星運用終了時のデブリ化防止、既存デブリの除去などを行うとしている。同社は2018年にJ-Startup(注1)に認定され、2023年10月には、J-Startupが主催するインパクトスタートアップ育成支援プログラムのJ-startup Impact(注2)にも選定されている。

また、アストロスケールホールディングスの米国子会社であるアストロスケールUSは2023年9月19日に、米宇宙軍より衛星の燃料補給技術の開発を2,550万ドルで受注している。人工衛星は最初に搭載された燃料やバッテリーなどによって運用期間が設定されており、本技術開発に成功した場合、低軌道では数年とされていた衛星の運用期間延長が可能となる。

打ち上げを行ったロケットラボは、2006年にニュージーランドで設立され、2020年に本社を米国カリフォルニア州に移した。初めての打ち上げは2018年で、2024年2月21日までに44回のロケット打ち上げを実施し、177基の衛星を宇宙に送っている。バージニア州に1カ所、ニュージーランドに2カ所の計3カ所の発射場を持っている。

同社はアストロスケール以外にも、QPS研究所など、他の日系宇宙関連企業とも打ち上げ契約を締結しており(2023年8月28日記事参照)、QPS研究所の打ち上げは2023年12月15日に成功している。

(注1)日本のイノベーション政策の一環として、2018年に経済産業省主導で立ち上げたスタートアップ企業の育成支援プログラム。経済産業省、ジェトロ、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が事務局を務めている。詳しくは、J-Startupオフィシャルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照。

(注2)社会的・環境的課題の解決や新たなビジョンの実現と、持続的な経済成長をともに目指すスタートアップに対する認知向上や支援の機運醸成を目指して、J-Startupにおいて、潜在力の高いインパクトスタートアップに官民一体で集中支援を行うプログラム。

(谷本皓哉)

(米国、日本)

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