メキシコで日本産ホタテの殻むき実証事業を開始

(メキシコ、日本)

メキシコ発

2024年02月26日

ジェトロは2月23日、メキシコ・バハカリフォルニア州エンセナダ市において、同地の水産加工企業3社と協力し、メキシコに初輸入された日本産冷凍両貝ホタテの殻むき事業の実証を開始した(注1)。本実証事業は、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水放出後の、中国による日本産水産品の輸入禁止措置を受けて開始したもの。単純な代替加工地の検証のみにとどまらず、新しい付加価値を与えた商品(注2)も開発することで、中国が禁輸措置を解除した際にも存続可能なサステナブルなサプライチェーンをメキシコ産業の中に構築することを目指している。

今回、ホタテの殻むきに協力したのは、水産加工業界団体の全国水産業会議所バハカリフォルニア州支部(カナインペスカ・バハカリフォルニア)の加盟企業であるアテネア・エン・エル・マル、バハ・マリン・フーズ、プロドゥクトス・マリーノス・アベセ(PMA)の3社。これら3社は、ジェトロが2023年11月にエンセナダを視察訪問したのち(2023年11月14日記事参照)、バハカリフォルニア州水産養殖庁(SEPESCA)と同州経済イノベーション庁(SEI)から推薦を受けた企業だ。アテネア・エン・エル・マルは、州内で養殖されているカキやミル貝を得意としており、貝の加工技術にたけた従業員を雇用している。バハ・マリン・フーズは、日本向けに輸出されるエンセナダ産畜養マグロの加工などを行っており、従業員は250人と3社の中で最多。PMAは、日本や東南アジア向けに輸出するイワシなどの加工が得意で、唯一の進出日系企業。3社とも初めてホタテの殻むき作業に挑戦したものの、力を加えて器具を挿入しなければ開けることができない殻の堅いカキなどの貝類の加工の経験があるため、多くの従業員が「ホタテは楽に開けて中身を取り出せるので、カキほどの労力を要さない」とコメントした。試験的に製造したホタテ貝柱は、生食用の試作品として、米国のバイヤーに試食提供し、商品化に向けたコメントを収集したのち、ジェトロを通じて各社にフィードバックする予定だ(注3)。

写真 アテネア・エン・エル・マルでの殻むきの様子(ジェトロ撮影)

アテネア・エン・エル・マルでの殻むきの様子(ジェトロ撮影)

写真 バハ・マリン・フーズでの殻むきの様子(ジェトロ撮影)

バハ・マリン・フーズでの殻むきの様子(ジェトロ撮影)

写真 PMAでの殻むきの様子(ジェトロ撮影)

PMAでの殻むきの様子(ジェトロ撮影)

写真 エンセナダでの日本産ホタテ貝柱の試作品第1号(ジェトロ撮影)

エンセナダでの日本産ホタテ貝柱の試作品第1号(ジェトロ撮影)

(注1)ジェトロと日本のホタテ所有企業が協力し、実証用の初輸入に成功した。これまでメキシコには、日本で殻がむかれた冷凍貝柱(玉冷)が米国経由では輸入されていたものの、日本からメキシコへの直接の両貝ホタテの輸入実績はなかった。

(注2)エンセナダは、陸路で米国との国境まで1時半、巨大消費地であるロサンゼルスへも4時間半の立地で、同地の水産加工企業は、冷凍品だけでなく冷蔵品も米国に輸出している。水産工場に原料が到着した時点から、加工時間を含めて24時間以内にロサンゼルスのレストランや店舗で販売が可能というエコシステムを生かし、アジアでの加工では提供できない再冷凍を施さない生食用冷蔵貝柱や、無加水・再冷凍の玉冷といった、現在米国に流通している日本産ホタテ商品とは異なる商品群も提案することが可能。

(注3)ジェトロは、3月にエンセナダへの視察ミッションの派遣と、現地協力3社への訪問や政府関係者との交流会の開催を予定。また、米国ロサンゼルスにおいて、米国の水産品バイヤーとミッション団の商談会の開催も予定している。

(志賀大祐)

(メキシコ、日本)

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