日本産ホタテ代替加工地の可能性、メキシコ・エンセナダ市は米国消費地へ24時間以内の冷蔵輸送可能

(メキシコ、米国、日本)

メキシコ発

2023年11月14日

ジェトロは11月8日、米国との国境から100キロ南に位置するメキシコ・バハカリフォルニア州のエンセナダ市を訪問し、米国への水産品輸出エコシステムを確認した。エンセナダ港はコンテナ取扱量がメキシコ第5位で、アジア太平洋航路のコンテナ船やクルーズ船の寄港地となっており、横浜港から直送が可能。同地の水産加工業界団体の全国水産業会議所バハカリフォルニア州支部(カナインペスカ・バハカリフォルニア:CANAINPESCA BAJA CALIFORNIA)には37社が所属しており、その約半数の工場が米国向けに輸出可能な米国食品医薬品局(FDA)の食品関連施設として登録されている。多くの企業が自社で米国に輸出しているため、輸出実務能力も高い。

エンセナダから米国国境までは陸送で2時間以内に到着する。そのため、マグロやカキなどは水揚げされてから冷蔵のままトラック輸送され、24時間以内にロサンゼルスやラスベガスなど米国の大消費地のレストランに並ぶため、商品の鮮度面で高い優位性を持つ。貝類に関しては、カキやムール貝、ミル貝、ハマグリ、アワビ、タイラギの仲間(カジョデアチャ:Callo de Hacha、学名はAtrina maura)などが養殖されており、加工用には殻むき作業が行われている。カジョデアチャは貝柱がホタテに似ている二枚貝で、バハカリフォルニア州沿岸からペルーまで生息している。

ジェトロがカナインペスカ・バハカリフォルニアのミネルバ・ペレス・カストロ会頭に、エンセナダでの日本産ホタテの加工の可能性についてインタビューしたところ、「メキシコは日本産の二枚貝の輸入が可能だ。当地の水産加工クラスターには殻むきに熟練した作業員が多く、実質的に問題ないと思われる。また、米国輸出には、冷蔵と冷凍の両方のコールドチェーンが整っていることから、日本産ホタテを貝柱(玉冷)にした後、他の商品と同じ冷蔵トラックに乗せれば、米国の大規模消費地まで冷蔵のまま24時間以内に輸送することが可能」とのことだ。

他方、バハカリフォルニア州水産養殖庁(セぺスカ:SEPESCA)のアルマ・ロサ・ガルシア・フアレス長官に、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水放出後の中国による日本産水産品の輸入禁止措置後の中国企業の動きについてヒアリングしたところ、「中国や韓国資本の工場は存在するが、ほとんどがイワシやロブスター、イカなどをアジア向けに輸出する業務を行っており、加工用に日本の水産品を輸入する動きなどは聞き及んでいない」とコメントした。

写真 カナインぺスカ・バハカリフォルニアとバハカリフォルニア州水産養殖庁との意見交換の様子(ジェトロ撮影)

カナインぺスカ・バハカリフォルニアとバハカリフォルニア州水産養殖庁との意見交換の様子(ジェトロ撮影)

写真 貝類の加工工場で説明するペレス会頭(中央、ジェトロ撮影)

貝類の加工工場で説明するペレス会頭(中央、ジェトロ撮影)

(志賀大祐)

(メキシコ、米国、日本)

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