電力消費量に占める再生可能エネルギーの割合、初の50%超え

(ドイツ)

デュッセルドルフ発

2024年01月15日

ドイツの連邦エネルギー・水道事業連合会(BDEW)とバーデン・ビュルテンベルク州太陽エネルギー・水素研究センター(ZSW)は12月18日、2023年の国内の総発電電力量に占める再生可能エネルギー(再エネ)の割合と電力消費量の推移(暫定値)を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(添付資料表1参照)。

2023年の電力消費量〔517.3テラワット時(TWh)〕に占める再エネの割合は、前年比で5.0ポイント増の51.6%となった。ドイツでは年間で同割合が50%を超えたのは初めて。BDEWとZSWはこの主因として、特に太陽光や陸上風力による発電電力量の伸びと全体の電力消費量の減少を挙げた。電力消費量の減少は、電力多消費産業部門を含む景気減速や、依然として高水準の電力価格が理由になっていると分析した。

BDEW執行委員会のケルスティン・アンドレエ委員長は「エネルギー産業に携わる企業はエネルギー転換への投資を望んでいるが、時間が掛かる認可手続きや過度な官僚主義、再エネ設備設置の土地の不足などが足かせとなっている」として、再エネ拡大のためのさらなる手続き面や制度上の改善の必要性を求めた。

ZSWのフリトヨフ・シュタイス執行役員は、再エネ拡大は新しい次元で求められていると述べた。合成した炭化水素の需要増加が見込まれる上、グリーン水素製造のためにも、再エネ由来の電力で運転する水電解装置が必要だ。さらに、大気中の二酸化炭素(CO2)を直接回収(Direct Air Capture:DAC)する設備の早急な立ち上げと拡大の必要性にも言及した。DACにより、製品製造過程で排出するCO2を回収して原料とするため、特に化学分野での炭化水素の需要、また、航空や海運などの分野で必要な合成燃料〔CO2と水素(H2)から製造〕の需要を賄うために、その原料のCO2を確保するためだ。DAC設備の運転にも再エネ由来の電力が必要になる。

なお、BDEWとZSWは2023年の国内の電源別発電電力量の構成比も併せて発表した(添付資料図参照)。発電電力量(508.1TWh)のうち再エネ由来の電力のおよその割合は53%。化石燃料と原子力由来の電力は47%で、うち褐炭が17%、天然ガスが16%、石炭が9%などだった。

再エネ設備容量の目標達成にはさらなる拡大の加速が必要

ドイツ連邦ネットワーク庁は1月5日、2023年の再エネの拡大状況を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、再エネの設備容量が前年から17ギガワット(GW)増の170GWだったとした。中でも太陽光発電容量は2023年に14.1GW増、その結果、全国の総設置容量は81.7GWとなった。陸上風力は2023年に2.9GW増、総設置容量は60.9GWとなり、順調な増加を見せている。一方、再生可能エネルギー法(EEG)で定めた太陽光と陸上風力の設備容量の目標(添付資料表2参照)は、2030年までにそれぞれ215GW、115GWと野心的だ。同目標は2022年にEEG改正で引き上げられ、2023年から施行されているもの。目標達成に向け再エネ設備設置のさらなる拡大の加速が急務だ。

(作山直樹)

(ドイツ)

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