紅海情勢の物流への影響受け業界団体が声明を相次ぎ発表、衣料品大手も配送遅延を懸念

(英国)

ロンドン発

2024年01月09日

紅海情勢の物流への影響を受け、英国の複数の業界団体が声明を発表している。

貨物輸送業の業界団体の英国国際貨物協会(BIFA)は1月2日に発表した声明で、サプライチェーンへの影響について次が想定されるとした。

  • 運賃とサーチャージの上昇
  • 航行スケジュールの著しい混乱
  • 欠便の発生
  • コンテナ数の不均衡
  • 代替輸送手段と代替輸送経路への需要増
  • 炭素排出量の増加
  • 保険料の上昇

これらの影響については、市場によって形態や程度が異なるほか、個別の運輸業者によっても対応が異なることに留意する必要があるとした。

英国小売業協会(BRC)のヘレン・ディキンソン最高経営責任者も、今後数カ月間は一部の商品の輸送日数が長期化する可能性があるほか、輸送コストや保険料の上昇に伴う在庫や価格への波及効果が懸念されるとしている(「BBC」1月3日)。

個別企業では、英国の衣料品大手ネクストが1月4日に公表した報告書で、スエズ運河へのアクセスが引き続き難航する場合、2024年初頭に配送遅延が生じる可能性があるとしている。

在英の日系食品ディストリビューターも、日本から英国向けに食品を輸送する際の海上運賃の上昇を指摘している(2024年1月9日記事参照)。業界団体としては、英国の食料品流通協会(IGD)が1月3日に発表した声明で、英国での短期・長期の影響を分析。短期的には、スエズ運河を経由して英国に輸入される食品は少数なことから、英国の食糧安全保障に重大な影響は生じないとしている。また、影響を受ける企業も、情勢を踏まえてサプライチェーンの調整を既に開始しているとした。世界的な原油価格の上昇が生じれば、消費者も影響を受ける可能性があるとしたが、現時点でエネルギー市場の影響は抑えられているとした。長期的にみると、迂回に伴う輸送日数の長期化などが将来的に消費者に転嫁される可能性が高いとした。これにより英国の経済や消費者に一定の影響が生じる見込みとした。英国の食品関連企業についても、エネルギー、化学品、包装に関連するコストの上昇の影響を受けることになるとした。

(山田恭之)

(英国)

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