2024年の世界経済成長率は2.4%、3年連続の鈍化、国連と世界銀行がそれぞれ見通し

(世界)

調査部国際経済課

2024年01月19日

国連経済社会局(UN DESA)は1月4日に「世界経済状況・予測」(2024年報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を、世界銀行は1月9日に「世界経済見通し」〔プレスリリース(英語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます日本語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)〕をそれぞれ発表した(添付資料表1、2参照)。2023年の世界経済成長率(実質GDP伸び率)は、UN DESAが2.7%、世界銀行は2.6%としたが、2024年については双方ともに2.4%と予測し、2022年以降3年連続で前年と比べて鈍化した(注)。前回見通しとの比較では、UN DESAが0.4ポイント(前回:2023年5月)、世界銀行が0.5ポイント(前回:2023年6月)の上方修正となった。

UN DESAは、2023年は「最悪のシナリオを回避した」とした。他方で、新型コロナウイルス禍以前の3%成長を下回る低成長が続くと予想する。労働市場は欧米で回復基調を示すものの、大半の国・地域で賃金上昇がインフレを相殺できていないと指摘。また、UN DESAは、途上国で2023年に食料不安を経験した人口を2億3,800万人(前年比2,160万人増)と推計している。

世界銀行は、好調な米国経済を主因に、世界同時不況のリスクが後退した点について、1年前と比較して好転した指標だと評価したが、2024年末までの5年間の経済成長率は「過去30年で最も低い」とした。長引く金融引き締めや、停滞する世界貿易と投資の影響を指摘した。2023年の世界の財・サービス貿易の伸び率を0.2%増と推計し、2009年と2020年の世界的な不況を除き、過去50年で最低とした。

UN DESAの報告書を基に国・地域別の経済成長率をみると、先進国では、米国(2024年のGDP成長率見通し:1.4%)が「深刻な下方リスクに直面する」とした。家計貯蓄の縮小や高金利、労働市場の軟化を受けて、これまで成長を支えた個人消費が弱まり、投資も低迷するとみている。EU(1.2%)も課題を抱え、インフレ緩和や賃金上昇を通じた個人消費の改善で回復基調にあるとする一方、緊縮財政や金融支援策の終了が成長を押し下げるとした。

新興国では、中国(4.7%)経済は2023年下半期に「峠を越えた」とするものの、不動産部門が依然として弱く、国外需要の低迷も伴い、緩やかな成長が予想される。東アジア(4.6%)は引き続き堅調な個人消費を見込み、観光業などサービス輸出も回復しているが、世界全体の需要減が地域の成長源の財輸出を押し下げる見通し。インド(6.2%)は主要経済で最も急速な成長を続けていると指摘。国内需要が力強く、製造業とサービス業の成長も底堅いとしている。

世界銀行は今後の見通しについて「(2024年からの)2年間の見通しは暗い」と予測する。下振れリスクが優勢とし、中東情勢やウクライナ紛争などの地政学リスクに対し、「対立が激化すれば、エネルギー価格の高騰を招き、世界の経済活動やインフレに大きな影響を与え得る」と指摘した。2025年の世界経済成長率は、UN DESA、世界銀行ともに2024年よりわずかに回復し、2.7%と予測している。

(注)UN DESAと世界銀行の成長率の算出方法は、添付資料の注釈を参照。

(藪恭兵、田中麻理)

(世界)

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