外国人労働者の健康診断、2023年12月から費用と頻度引き上げ、産業界は強く反発

(マレーシア)

クアラルンプール発

2024年01月25日

マレーシアの外国人労働者診察モニタリング局(FOMEMA)は、外国人労働者の健康診断にかかる費用を引き上げると2023年12月15日に発表した。加えて、実施頻度も引き上げることを2024年1月3日にSNS上で通知した。政府は企業に対し、外国人労働者への定期的な健診実施を義務付けており、FOMEMAは保健省に代わり健診制度を運営している。

FOMEMAの発表によれば、2023年12月16日以降に健診にかかる料金は、男性の場合は190リンギ(約5,890円、1リンギ=約31円)から207リンギへ、女性は207リンギから217リンギへ値上げされるとともに、頻度は1年に1度へ増えた。後述するマレーシア製造業者連盟(FMM)によると、従来、外国人労働者の健診は、マレーシア入国後3年間は毎年、その後は隔年で実施すればよいとされていた。今回の制度変更により、外国人労働者の滞在年数にかかわらず健診を毎年行うよう義務化されたかたちだ。

FOMEMAは、ウェブサイトのポップアップとSNS上でスクリーンショットによる通知を出しているが、これ以外に正式な政府からの発表はない。当局による発表が突然一方的に、しかも適切な方法で行われなかったとして、産業界からは強い反発が起きている。FMMは1月22日に(FMMプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、マレーシア経営者連盟(MEF)も1月17日に(MEFプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)それぞれ抗議声明を出し、料金の引き上げを見合わせるよう強く求めた。FMMは、FOMEMAが外国人労働者の健診制度に介入すること自体に疑義を呈しており、今からでも当局と産業界との間で協議を持ち、健診頻度や費用の引き上げに至った根拠と正当性を示すよう政府に要請している。

MEFは、マレーシアには約200万人の外国人労働者がいるため、雇用者負担は年間4億1,400万リンギに増えると推計。FMMも、製造業に従事する外国人労働者数を60万人と見積もった場合、雇用者が負担する健診費用は年間1億2,420万リンギに上ると試算している。さらに、製造業分野の外国人労働者が10年間働くと仮定すれば、その費用は4倍に増加し、雇用者負担は最大5億リンギまで膨らむ。すでに各種コスト増や、地政学的な混乱など外的環境の不確実性に直面している製造業の経営状況が、健診の値上げにより更に悪化すると訴えた。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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