証券市場の活性化に向け、証券市場法と投資ファンド法の改正を公布

(メキシコ)

メキシコ発

2024年01月05日

メキシコ政府は2023年12月28日、連邦官報で証券市場法と投資ファンド法の改正外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます令を公布し、翌日に施行した。適用の詳細については、改正発効の翌日から365日以内に国家証券委員会(CNBV)および中央銀行が策定する細則の公布を待つ必要がある。法改正の内容は多岐にわたるが、その中でも重要な内容は次のとおり。

  1. 簡易株式上場制度の創設
  2. 既存の上場企業に対する一連の規制緩和
  3. 敵対的買収の防衛を目的とした規定の導入
  4. 投資ファンドの一形態として「ヘッジファンド」(注)を定義し、関連規定を導入

改正内容で最も重要なのは、(1)の簡易上場制度の創設だ。メキシコで株式を上場する場合、通常はCNBVが管理する国家証券登録(RNV)に公開する株式を登録した上で、株式公開の許可を得る必要がある。簡易株式上場制度の場合、上場を仲介する証券会社と企業が連帯責任の下で証券取引所に対して必要書類を提出し、証券取引所がCNBVに代わって書類を審査する。要件を満たした場合、証券取引所がCNBVに対して届出を行うだけでRNVへの登録は完了する。詳細な書類・審査要件については今後CNBVが公布する細則を待つ必要があるが、従来よりも大幅に緩和される見通しだ。簡易上場制度を用いれば、上場までの期間と費用は大幅に削減されるとみられ、中小企業にとっても株式市場が新たな資金調達手段として映ることが期待される。

経済規模に比して少ない上場企業

メキシコには、1894年に設立された歴史あるメキシコ証券取引所(BMV)と2018年に創設された制度的証券取引所(BIVA)の2つの証券取引所がある。BMVに上場している企業は143社、BIVAは82社となっている。BIVAはBMVに上場していない企業の上場を視野に入れて創設されたが、結果的にはほぼ同じ企業が双方に上場している。メキシコのGDPは2022年に世界14位の規模だが、世界銀行のデータ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、国内上場企業の数は世界35位で、中南米ではブラジル(20位、345社)、ペルー(29位、199社)、チリ(30位、194社)の後塵を拝しており、証券市場活用の遅れは顕著だ。

上場企業が少ないことは、メキシコ企業で財務データが公開されている企業が少ないことを意味する。また、日本のように優秀な信用調査会社も少ないことから、メキシコの地場企業を顧客に持つ進出日系企業にとっては、取引先の与信調査は困難を極める。今回の改正により、上場企業が少しでも増えることが期待される。

(注)特定の機関投資家などから資金を集め、デリバティブ(金融派生商品)などを組み合わせて株式や債券、為替や商品など幅広い商品に投資することで、資産価値の下落リスクをヘッジすることを狙う投資信託。スペイン語ではFondo de Coberturaと呼ばれる。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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