米国の2023年のVC投資総額は前年比35.9%減も、生成AI分野は堅調

(米国)

ニューヨーク発

2024年01月11日

米国調査会社のCBインサイツが1月4日に公表した、世界におけるスタートアップへの投資状況に関する調査レポート「ステート・オブ・ベンチャー(State of Venture)2023」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国における2023年のベンチャーキャピタル(VC)投資総額は前年比35.9%減の1,324億ドル、投資件数は22.6%減の1万1,116件にとどまった。金利上昇による資金調達環境の悪化やマクロ経済の不透明感などに起因して、新興企業への投資を控える動きが広がったことが減少の要因。

レポートによると、米国におけるスタートアップへの投資は、投資総額・件数ともに過去最高に達した2021年以降、減少傾向にある。直近の2023年第4四半期における投資件数は前期比21%減となり、四半期ベースでは2013年以来の低水準に落ち込んだ。投資ステージ別の割合をみると、アーリーステージへの投資の占める割合が前年からわずかに上昇して全体の65%を占め、ミドルステージ、レイトステージは、投資全体に占める割合がともに前年から変わらず、それぞれ全体の10%、7%となった。

また、2023年は前年に続き、M&AやIPO(新規株式公開)といった、スタートアップの投資回収(エグジット)の減少が目立った。米国におけるM&A件数は3,109件と前年比22.6%減になり、IPO件数も20.8%減の61件まで落ち込んだ。CBインサイツによると、食料品・日用品の買い物代行サービスを展開するインスタカートやマーケティング自動化サービスを展開するクラビヨといったユニコーン企業が9月に上場したことから、多くの投資家はこれが他社のIPO申請の引き金になると期待していた。しかし、両社とも上場後の株価の推移が芳しくなかったことから、そのほかの有力スタートアップによるイグジットを脅かした可能性があるとされている。

AI分野への投資は活発

スタートアップのデータベースを運営するクランチベース(12月28日)によると、2023年は大半の業種でスタートアップへの資金流入が減少した中、人工知能(AI)への投資は活発だった。特にオープンAIが開発した対話型AI「ChatGPT」が2022年11月に登場してからは、既存のAIとは異なる創造的なアウトプットを生み出せる生成AIが注目されるようになった。クランチベースによると、米国に拠点を置く企業による資金調達の中では、オープンAIによる100億ドルの調達が2023年最大の案件だった。特に多額の資金を投資しているのがマイクロソフトで、アルファベットやアマゾンといった生成AI開発を進めるそのほかの大手テック企業に対抗している。このほか、オープンAI以外にも、アンスロピックが合計70億ドル近い資金調達に成功するなど、2023年の大型資金調達の多くを生成AIの関連企業が占める結果となった。

(樫葉さくら)

(米国)

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