エネルギー移行投資計画への資金増、アフリカ開発銀行などが融資決定

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2023年12月25日

アフリカ開発銀行(AfDB)は12月12日、南アフリカ共和国の「公正なエネルギー移行投資計画(JET-IP)2023-2027PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」対して、3億ドルの融資を承認したと発表した。南ア政府が11月21日に発表した譲許的融資に関する融資契約に基づいたもので、メディア向けの発表では、AfDBのほかに、世界銀行、ドイツ復興金融公庫(KfW)の融資も予定されている。融資額は世界銀行が10億ドル、KfWが5億ユーロとなっている。これらはソブリンローンで、南ア政府の国庫資金調達戦略にのっとって交渉が進められてきた。

JET-IPは11月に閣議決定され、低炭素社会を目指して、気候変動に強い経済に公正に移行するための投資や対応策について定めている。送電網への投資拡大や、新エネルギー自動車(NEV)への投資、グリーン水素経済の可能性の活用に重点を置くだけでなく、違法採掘の撲滅、南ア国営石油会社(SANPC)設立なども含む。

アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、南ア政府は国際パートナーズグループ(IPG、注1)に対して資金調達の現状などを含む最新情報を発表した。報道によると、合計116億ドルの拠出が同計画に予定されているとされ、2021年当初の85億ドル(2022年12月28日記事参照)から増加した。南ア政府はJET-IPの5年間で約987億ドル必要と推定し、最も資金が必要なのは電力セクターの472億ドルとする。南アの限られた財政を踏まえると、国際社会の資金供与が計画達成のカギを握るとされる。JET-IPは石炭産業などから反発を受けており、南アのシリル・ラマポーザ大統領は「誰も取り残されないエネルギー移行」の推進を国民に強く訴えている。

COP28でラマポーザ大統領は脱炭素社会に向けて引き続き努力する姿勢を見せているものの、「途上国のエネルギー危機を解決し、貧困と失業を減らしながら気候変動対策を実施するべき」と述べており、先進国が気候変動対策のために導入する炭素国境調整措置(注2)に反対を表明した。

(注1)英国、米国、ドイツ、フランス、EUを中心に設立、デンマーク、オランダも加わった。

(注2)気候変動対策を行う国が対策の不十分な国からの輸入品に対し、課税や課徴金などでコストを上乗せする国境措置。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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