AZEC首脳会合が初開催、日本主導でアジアの脱炭素化を支援へ

(日本、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

調査部アジア大洋州課

2023年12月28日

アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)首脳会合が12月18日、東京で初めて開催された。日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議に合わせた開催で、岸田文雄首相やASEAN加盟国を中心とするAZECパートナー国(注1)の首脳らが参加し、アジアの脱炭素化と経済成長を同時に進めるAZECの取り組みや方向性を確認した。

岸田首相は「多様な道筋による、ネットゼロ」という共通目標の達成や、「脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障」の同時実現の重要性を訴えた。その上で、脱炭素はアジアの共通課題で、解決の鍵はイノベーションだと強調した。日本は先頭に立ってペロブスカイト太陽電池、洋上風力、水素、CCS(注2)など、次世代のグリーントランスフォーメーション(GX)技術の開発や導入加速に向けた法整備を進めつつ、日本の技術や経験を共有していくと表明した。その手段として、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)に「アジア・ゼロエミッションセンター」を設立し、各国の脱炭素ロードマップ作成支援や制度整備の検討など、政策協調を進めていく。

また、岸田首相は、経済界同士の連携強化にも言及した。AZECパートナー国と日本企業などとの間には350件以上の具体的な協力案件が進んでおり、ゼロエミッション工業団地の形成など、協力案件を通じたグリーンサプライチェーンが構築されていると説明。それを後押しするかたちで、ASEANビジネス諮問委員会と経団連やERIAによる「AZECを支援する賢人会議(AZECアドボカシーグループ)」の設置、トランジション・ファイナンスの推進を提案した。企業連携やファイナンスを通じて、アジアの巨大な脱炭素市場に世界中から資金をひきつける狙いだ。

齋藤健経済産業相は、2023年3月に開催した第1回AZEC閣僚会合(2023年3月30日記事参照)以降の協力の進展を報告した。ロードマップ策定支援や人材育成など、アジアの政策ニーズに寄り添った取り組みが進展しているほか、太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス、水素・アンモニア、液化天然ガス(LNG)、合成燃料、CCUS(注3)、省エネ、産業の脱炭素化など、幅広い分野での具体的なプロジェクトが動いていると説明した。

AZECパートナー国の首脳からは、AZECの考え方への幅広い支持とともに、AZECの活動への高い期待が表明された。

(注1)AZECパートナー国(アルファベット順)は、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム。

(注2)CCSは二酸化炭素(CO2)を分離・回収し、地中などに貯留する技術。

(注3)CCUSは回収したCO2の有効利用も含めた技術。

(庄浩充)

(日本、オーストラリア、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム)

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