欧州会計検査院、EUの長期的なバイオ燃料政策の必要性指摘

(EU)

ブリュッセル発

2023年12月22日

欧州会計検査院(ECA)は12月14日、EUの運輸部門のバイオ燃料普及に向けた支援のあり方に関する報告書を発表した。バイオ燃料は化石燃料の代替として考えられているが、EUは現在、バイオ燃料に関する長期的政策が欠如しており、十分な投資を呼び込むことができておらず、持続可能性や製造コストなどが課題だと警告した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2030年以降の脱炭素化に向けてバイオ燃料戦略を策定し、持続可能な生産と、運輸部門のエネルギー転換を促進する必要があると欧州委員会に提言した。

EUでは2023年4月に2030年のエネルギーミックスに占める再生可能エネルギー(再エネ)の目標を定める再エネ指令を改正し(2023年9月20日記事参照)、運輸部門は2030年までに再エネ比率を29%以上とするなど、より野心的な目標を設定した(添付資料表参照)。

改正前の再エネ指令での運輸部門の再エネ比率目標は、道路と鉄道に関して2020年までに10%、運輸部門全体で2030年までに14%を掲げており、各加盟国は燃料供給業者に再エネの利用義務を課した。しかし、バイオ燃料とバイオガスだけで目標を達成したのは、スウェーデン、ルクセンブルク、エストニア、フィンランド、オランダ、マルタ、スロベニアの7カ国のみだった。

ECAは欧州委に対して、2024年までに2030年以降のバイオ燃料の戦略を策定し、2027年までに持続可能なバイオ燃料の重要な供給源としてのバイオマスの効率的な利用のため、バイオマスの供給や需要、サプライチェーン、持続可能性、利用の優先順位などを検討すべきとした。また、バイオ燃料部門に公平な競争条件と安定性を確保するため、2025年までに先進的バイオ燃料の原料の分類に関するガイダンスを改善すべきとした。2027年までには2030 年以降の枠組みを見据え、技術レベルにかかわらず、不正リスクの高さと一部の原料の入手可能性に対処するために、利用上限を用いるか、またどのように用いるか評価を実施するように勧めた。

(大中登紀子)

(EU)

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