米サンディエゴで「先進自動車バッテリーカンファレンス」、ジェトロブースでは各社最新技術アピール

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月22日

先進自動車バッテリーカンファレンス(AABC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」が121114日、米国カリフォルニア州サンディエゴで開催された。主催者はエネルギー貯蔵分野のイベント組織のケンブリッジエネルテック。参加登録者数は約1,600人で、スポンサーにはトヨタをはじめとする主要自動車メーカーや電機メーカー、バッテリー関連企業など119社が名を連ねた。期間中は734社が出展する展示会と、210人以上のスピーカーによるカンファレンスが同時開催され、活発な議論が行われた。20211月のジョー・バイデン大統領就任以降に成立したインフラ投資雇用法(IIJA)やインフレ削減法(IRA)などによる、国内を中心とした電気自動車(EV)用バッテリー生産の強化を目指す政策を受け、バッテリー業界は盛り上がりを見せている。

カンファレンスでは4日間にわたり、バッテリー素材からエンジニアリング、生産、リサイクル、新技術のほか、人工知能(AI)によるバッテリー管理、燃料電池に至るまで、技術分野の幅広いテーマが議論された。

学術的かつ専門的な内容に焦点が当てられているため、参加者は企業の研究開発(RD)担当をはじめとした技術者が多くを占めたのが特徴。バッテリー業界や市場の見通しに関しては、バッテリーやエネルギー貯蓄システムのコンサルティング会社であるフランスのアビセンヌ・エナジーのマイケル・サンダース・シニアアドバイザーが2030年時点の世界におけるリチウムイオンバッテリーセルの生産能力に関し、2022年の4倍以上に当たる約4.2テラワット時(TWh)にまで伸びるとの見通しを発表。国別のシェアでは、中国が67%から50%に減少する一方で、北米は10%から20%に増加するとの見方を示した。

北米のバッテリー需給見通しに関しては、現時点では2030年の生産能力が約1.2TWhに上ると計画されているものの、計画の遅れや中止が今後予測されることから、実際には700ギガワット時(GWh)にとどまり、需要見込みの約800GWhを下回ると予測した。2024年のバッテリー式電気自動車(BEV)の販売市場に関しては、韓国のバッテリーメーカーのLGエナジーソリューションのロバート・リー北米社長兼最高戦略責任者(CSO)が、想定(注)より伸びの速度は緩やかになるものの、欧州で2023年比43%増、中国で34%増、米国で27%増と、いずれも大幅な増加を見込んでいると明らかにした。

写真 カンファレンスの会場(ジェトロ撮影)

カンファレンスの会場(ジェトロ撮影)

今回のAABCには、ジェトロがバッテリーの素材や製造装置などを扱う日系企業5社を取りまとめて日本ブースを出展。業界関係者からの注目度が年々高まるAABCの場を活用し、日米のエンジニア同士の交流の機会を創出することで、将来の技術提携や部品供給などへの道筋をつくることを目的として参加した。参加した企業からは、「米国のリチウムイオン電池市場についてあまり知見がなかったが、今回の出展を通じ、これから取り組むべき課題がかなり明確になった」「展示会で出会った企業を早速フォローアップしたところ、良い商談の機会が設定できた」といったポジティブなコメントが寄せられた。

写真 日本ブースの商談風景(ジェトロ撮影)

日本ブースの商談風景(ジェトロ撮影)

(注)比較の起点は明らかにされていない。

(大原典子)

(米国)

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