デモ隊による違法な道路封鎖を厳しく取り締まり

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2023年12月28日

アルゼンチンの治安省は12月14日、デモ隊による公道の寸断、封鎖に対する取り組み方針外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。翌15日には治安省決議943/2023号外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、ブエノスアイレス市内で頻繁に発生してきた違法な道路封鎖に厳しい態度で臨む政府の方針を明らかにした。

アルゼンチンでは、労働組合や非正規労働者の集まりである社会運動組織が、道路封鎖を政府への抗議手段に用いた「ピケテ」と呼ばれるデモ活動が頻繁に行われてきた。治安省は今回、違法な道路封鎖に関する12の取り組み方針を掲げ、翌15日にこれらの一部を決議のかたちで公布した。

  1. 道路封鎖に対して4つの連邦治安部隊(国家憲兵隊、沿岸警備隊、連邦警察、空港警察)を投入して対応する。
  2. 治安部隊は、司法の介入を待つことなく現行犯に対応する。
  3. 迂回路があろうとなかろうと、主要道路の封鎖は認めない。
  4. (治安部隊の介入は)全面的に自由な通行が確保されるまで行われる。
  5. 治安部隊は、抵抗の規模に比例して必要最小限かつ十分な人員で対応する。
  6. (違法な道路封鎖の)主犯者、共犯者、扇動者を特定する。
  7. 行政罰、刑事罰の適用を目的に(違法な道路封鎖に)使用された自動車を特定する。
  8. (違法な道路封鎖の)主犯者、共犯者、参加者、扇動者の情報は、関係する行政機関に報告される。
  9. タイヤを燃やすなど環境を破壊する行為が行われた場合は、対応する裁判官にも報告する。
  10. 児童や未成年者をデモに参加させた場合、未成年者の保護に関係する行政機関に報告し、引率者を罰する。
  11. 治安活動に要した費用は、違法な道路封鎖を伴うデモの主催者に請求される。主催者が外国人の場合は、移民局に報告される。
  12. デモを行う団体の登録制度を創設する。

2001年12月20日に、当時のデ・ラ・ルア大統領の退任を求めてブエノスアイレス市の五月広場に集まった人々を治安部隊が制圧し、多くの死傷者が出たことに端を発し、ブエノスアイレス市では毎年12月20日に大規模なデモが行われてきた。2023年は、左派の社会運動組織「労働センター(Polo Obrero)」などが、ミレイ大統領が発表した大型経済改革に反対するデモを行った。治安省は取り組み方針に基づき、デモの主催者や参加者に警告しつつ、金銭や食事と引き換えに動員された人々への監視を強化した。その結果、デモは大きな規模にはならなかった。

写真 道路封鎖は違法行為であると警告(ジェトロ撮影)

道路封鎖は違法行為であると警告(ジェトロ撮影)

写真 違法な道路封鎖への参加者は社会支援を受けられないと警告(ジェトロ撮影)

違法な道路封鎖への参加者は社会支援を受けられないと警告(ジェトロ撮影)

今後、ミレイ大統領が提唱するショック療法の進展とともにデモは頻発するとみられ、その封じ込めに成功するかどうかに注目が集まる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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