ジェトロ、ルクセンブルク拠点に欧州ビジネス展開目指す日系企業のミッション派遣

(ルクセンブルク、日本)

ブリュッセル発

2023年12月12日

ジェトロは11月27~29日、ルクセンブルクでのビジネスに関心のある日系企業6社を海外現地視察(ミッション)に派遣した。ジェトロは2022年10月にルクセンブルクの投資誘致・イノベーション促進を担うルクスイノベーション(Luxinnovation)と、同国最大の経済団体のルクセンブルク商工会議所とクロスボーダービジネスの促進に向けた協力覚書(MOC)を締結しており(2022年10月11日記事参照)、この協力事業の一環として実施した。ルクセンブルクのスタートアップエコシステムや、同国の欧州ビジネスでの優位性に関心を持つ人工知能(AI)・デジタルや、環境、製造業など幅広い業種の企業が参加した。

ルクスイノベーションのジェニー・ヘレン・ヘドバーグ国際ビジネス開発部門長はルクセンブルクでビジネスをする強みとして、欧州の大規模市場のフランスやドイツへのアクセスの良さと、多言語を話すマルチリンガル人材を挙げた。鉄鋼を中心とした経済から、1980年代に金融業中心の経済に転換したルクセンブルクは現在、AIやロボティックスを中心とするデータ・デジタル関連産業と宇宙産業の育成に焦点を当てているという。

写真 ルクスイノベーションのジェニー・ヘレン・ヘドバーグ氏(ジェトロ撮影)

ルクスイノベーションのジェニー・ヘレン・ヘドバーグ氏(ジェトロ撮影)

ミッションに参加したスタートアップのリスク計測テクノロジーズ(本社:横浜市)の岡崎貫治氏は同国の魅力として、イノベーションに開かれており、新製品の実証実験の場として適している点を挙げた。同社は、音声を基に感情や眠気リスクなどを推定する音声解析エンジンの開発・提供を行う。日本で開発を進める傍ら、メンタルヘルスを重視する欧州市場にも狙いを定めた。他国と比べてビジネスの人脈形成がしやすいなど、ルクセンブルクのエコシステムの完成度の高さに驚いたという。

写真 ネットワーキングイベントでプレゼンするリスク計測テクノロジーズの岡崎氏(ジェトロ撮影)

ネットワーキングイベントでプレゼンするリスク計測テクノロジーズの岡崎氏(ジェトロ撮影)

ルクスイノベーションのスタートアップ支援プログラム(Fit 4 Start外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)に10月に選出されたThermalytica(サーマリティカ、本社:つくば市)は、微細なエアロゲル粒子の超断熱材を開発するスタートアップだ。塗料などに同社の断熱材を加えることで、建物などの断熱性能を向上させることができ、宇宙産業への応用も期待される。本社を置くつくば市は、ルクスイノベーションと宇宙分野をはじめとするスタートアップ支援で連携強化するMOCを締結していることもあり、同社にとってルクセンブルクはなじみのある国という。同社の篠本遼氏は同国の魅力として、政府機関との円滑な連携が可能で、ビジネス支援の体制が整っている点と、フランスやドイツなどの欧州主要都市にアクセスが容易な点を挙げた。同社の提供する断熱材は気候変動対策としても重要な役割が期待される。古い建物が多く、エネルギー効率の課題(2021年12月17日記事参照)への問題意識が高い欧州は重要な市場だと語る。今後はルクスイノベーションの支援を受けながら、ルクセンブルクを拠点に欧州各国でのビジネスの展開を目指す意向だ。

写真 ネットワーキングイベントでプレゼンするサーマリティカの篠本氏(ジェトロ撮影)

ネットワーキングイベントでプレゼンするサーマリティカの篠本氏(ジェトロ撮影)

(大中登紀子)

(ルクセンブルク、日本)

ビジネス短信 b0137994a244db31