米老舗百貨店のメイシーズ、投資家グループが非公開化に向けた買収提案

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月19日

米国老舗百貨店を運営するメイシーズは12月10日、不動産投資会社アークハウス・マネジメントと資産運用会社ブリゲード・キャピタル・マネジメントを含む投資家グループから、同社の非公開化に向けて、58億ドルの買収を提案された。複数のメディアが報じた。

投資銀行TDコーエンは、メイシーズが非公開化するメリットについて、経営上の自由度が高くなり、内部の変更が自由にできるため、長期的な計画を立てるには良い選択だとコメントしており、「非公開にすることで、われわれが知るメイシーズの事業をより自由、より迅速に変更・解体が可能になる」と述べている(ヴォーグ・ビジネス12月13日)。

1858年に設立され、160年以上の歴史を有するメイシーズは、毎年ニューヨークで行われる感謝祭パレードの主催者で、米国で最も知名度の高い百貨店の1つだ。現在は全米に約500店舗のメイシーズの直営店に加え、同社傘下にある「ブルーミングデールズ」を約60店舗、2015年に買収した美容・スキンケア・チェーンの「ブルーマーキュリー」を約160店舗展開している。

メイシーズはこれまで何十年にもわたって、百貨店モデルの代名詞であり、買い物客にとって魅力的な存在だったが、アマゾンをはじめとするオンライン販売の台頭への対応や店舗の見直し、買い物客の嗜好(しこう)の変化への適応が遅れていたために、苦戦を強いられている。また、過去10年にわたって、ブランドがウェブサイトなどを通じて消費者へ直接販売するD2C企業の成長が続き、ウォルマートやターゲットなどの大手小売業者も事業拡大に取り組み、他社との競争が激化していた。

小売業界では特に百貨店セクターが苦境に立たされており、国勢調査局によると、米国では2000年以降、百貨店の小売売上高は半減しているという。長年にわたって販売不振が続いていた状況の中で、新型コロナウイルスの感染拡大がさらに追い打ちをかけることになり、JCペニーやニーマン・マーカス、ロードアンドテイラーなどの大手老舗百貨店が次々と経営破綻に追い込まれることとなった(CNN12月12日)。

近年は、プライベート・エクイティ・ファンドなどの投資家グループが、経営難に陥っている小売企業を積極的に買収しており、非上場・非公開化することで経営の改善を図ってきた。しかし、それでもなお閉鎖に追い込まれる事態も生じている。ロードアンドテイラーや玩具販売のトイザラスなどもその一例で、メイシーズの先行きにも注目が集まる(CNN12月11日)。

(樫葉さくら)

(米国)

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