エネルギーに関する政令を承認、一部世帯を除き電力の自由料金を義務化へ

(イタリア)

ミラノ発

2023年12月15日

イタリア政府は、ジョルジャ・メローニ首相とジルベルト・ピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相の発議による、エネルギーに関する緊急規定(政令)を11月27日に閣議決定し、同政令の具体的な修正・追加案を12月5日に承認した。この政令では、エネルギー安全保障、再生可能エネルギー(再エネ)促進、エネルギー集約型企業に向けた支援などが柱となっており、修正・追加案では、一定条件の利用者を除き、電気料金の自由料金への段階的な移行を義務付けることが盛り込まれた。

イタリアでは2007年7月1日から、電力市場が自由化されている。これまでは、すべての利用者が自由料金を設定する供給事業者を選択できる一方、選択しない利用者に適用される規制料金も存続していた。規制料金は、イタリア・エネルギー・環境局 (ARERA) によって定期的に更新されている。

同政令の修正・追加案では、イタリアで規制料金が適用されている900万世帯に対し、2024年1月10日までに自由料金を設定する供給事業者を選択することを求める一方、経済的に弱い立場にある約450万世帯については、規制料金を継続することを認めている。政府は移行に当たり、不当な料金値上げや供給条件の変更を防ぐための規制を強化する。

規制料金の廃止については、2017年8月に発表された「年間市場・競争法案」に盛り込まれており、かつ、2021年に発表された、新型コロナ危機からの復興計画「再興・回復のための国家計画(PNRR)」(2021年5月10日記事参照)に関する公約においても、EUから第3回の財政拠出を受ける条件となっていた。PNRRへの第3回の財政拠出は、10月9日に欧州委員会からイタリアに対し185億ユーロの支払いが行われており、政府はこれに沿って対応したかたちだ。

今回の政令には、化学、ガラス、繊維などのエネルギー集約型企業の再エネ設備導入に対する新たな補助金の支給や、土地利用の際に太陽光や風力発電事業者を優先させる措置、イタリア南部の2つの港湾における浮体式風力発電設備の生産や組み立てのための造船分野への投資開発に適したインフラを構築するなどの再エネ推進策が含まれている。その他、ガスを大量に消費する企業が、国内でガスを採掘する企業から有利な価格でガスを購入できるという措置が盛り込まれた。

(平川容子)

(イタリア)

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