2度目の国民投票でも新憲法草案が否決、大統領は改憲プロセスの終了発表

(チリ)

サンティアゴ発

2023年12月22日

チリで新憲法草案の是非を問う国民投票が12月17日に実施され、賛成547万25票(44.24%)、反対689万4,287票(55.76%)で、反対が賛成を11.52ポイント上回り、否決された。否決は2022年9月に続いて2度目。投票数は有権者の84.48%に当たる1,301万4,963票で(開票率:99.97%)、無効票が48万730票(3.69%)、白票が16万9,921票(1.31%)となった。

新憲法制定プロセスを巡っては、1度目の草案が現政権を構成する左派と中道左派を中心に作成され、急進的な内容が盛り込まれたことで、国民の賛同を得られずに否決された(2022年9月6日記事参照)。今回の2度目の草案は1度目とは対照的に、野党の右派と中道右派が中心となって作成したが、保守的な内容が盛り込まれたことや、新憲法制定プロセスへの信頼度が低下していたこと(2023年11月15日記事参照)、長引く同プロセスへの国民の疲弊が反映されたとみられ、否決に至った。現政権与党は、軍事政権下で制定された現行憲法に国家の義務や先住民族の認知などの記載がなく、内容が不十分だと指摘し、長年にわたり新憲法の制定を主張してきたが、2度の新憲法制定プロセスで結果を残すことはできなかった。

投票結果を受けて、ガブリエル・ボリッチ大統領は、自身の任期中(2026年3月まで)での新憲法制定プロセスはここで終了すると発言した。加えて、政府が緊急に対応しなければならないことがほかにあると言及し、取り組むべき課題として、年金制度改革や経済成長の促進、富の再配分、安全保障の強化、男女格差の解消などを挙げ、「国民の優先課題は自身および政府の優先課題でもある」とコメントした。

(岡戸美澪)

(チリ)

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